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若者に拡がるモノやコトが世界を変える

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「若者の1台目のテレビ」が中国でスピード普及

 

若者のテレビ離れといわれ、先進国では不調のスマートテレビだが、中国市場ではハイスピードで売り上げが伸びている。

奥維諮詢(AVC)の調査では、スマートテレビの売り上げ台数は、2012年850万台、2013年1690万台、2014年には前年比倍増の3500万台と予測。
スマートテレビの浸透率は、2014年3月末時点で56%、2014年末までに70%を達すると予測している。

このスマートテレビの普及には、2010年4月に、雷軍によって設立された中華人民共和国北京市に本社を置く通信機器・ソフトウェアメーカー小米科技(Xiaomi、シャオミ)の力が大きい。

47インチ3Dスマートテレビが5万円弱という低価格で販売され、セットトップボックスは3コア以上のCPUを備え、フルHD画質・4K対応、使いやすいサイトデザインと、安価で高性能なハードウェアとして、テレビの価格革命を起こした。

売れ筋のスマートテレビは、大型薄型テレビ40~50インチが55%を占め、動画コンテンツを高画質・大画面で見ることに、大きな魅力を感じているスマートテレビユーザーの存在が浮き彫りになった。年齢分布は、25~34歳の割合が48%、35~44歳が29%と、若い世代に普及している。

Xiaomiの「若者の1台目のテレビ」というキャッチコピーの通り、テレビ離れといわれた若者に、大画面テレビで見たい時に見たいものを見るというスタイルを生み出したのだ。

Xiaomiは、さらに動画コンテンツの充実をめざし、中国ビデオ配信のYouku Tudouに対し、出資を行うと述べた。

 

中国政府の情報統制介入

 

スマートテレビの普及により、中国国内ほぼ全土の地方テレビ局、更に香港・台湾・海外のチャンネルまで数千チャンネルを無料で見ることができるようになった。

しかし、中国政府当局が情報統制のため、2014年7月頃から中国国務院(日本の内閣に相当)直属機構である広電総局(国家ラジオ・映画・テレビ総局)がインターネットテレビを監視・管理して規制する方向へと向かった。

理由は、中国のテレビコンテンツ配信が、広電総局配下の全国衛星ケーブルテレビ各社を通じ、各地で提供されているデジタルテレビチューナーボックスを購入して、月額制で受信するという仕組みであったため、毎月の視聴収入が徴収できなくなった点と、視聴できる情報が、中国国内に留まらず、香港・台湾・海外のチャンネルまで拡がった点があげられる。

しかし、若者のテレビ離れに歯止めがかかった理由は、安価なテレビというだけでなく、中国のテレビで流される愛国心を植え付けるためのニュースやドラマ・映画などのコンテンツではなく、グローバルな視点を養うことができる世果中の情報を得ることができるという点と、中国社会の競争に疲弊した自分を癒やすための動画コンテンツを探し、楽しむものとしてスマートテレビがマッチしたという点が大きい。

XiaomiのYouku Tudouへの出資は、若者に自由を与えるためのひとつの理由にもなるだろう。

 

中国政府の転換を起こす可能性も

 

香港では、中国政府に対し、若者を中心に何万人もの人々が民主的権利を要求しデモが起きている。

2011年のエジプト革命を覚えているだろうか。
若者を中心とする高い失業率、穀物高騰による食糧品値上げで貧困層の経済状況が悪化、チュニジア政変、民主化運動を支持する青年組織や野党勢力が大規模な反政府デモを計画した。

エジプトにおいて多人数が集まっての集会、デモは禁止されていたが、ソーシャルネットワークを介した呼びかけにより8万人を超える人が集まり、軍は中立を表明し、諸外国からも退陣を要求されるに至り、ムバラクは追いつめられ、遂に大統領職を辞した。

香港で起きたデモが象徴するように、若者は強制的な統制ではなく、自由を求めている。
自分の目で選んだ、世界の情報を得ることに飢えており、それが、スマートテレビの普及にも一役買ったのだ。

エジプトの革命は、SNSの力で、市民が国家に変革をもたらした。

Xiaomiは、テレビを売るのではなく、新しい国家を生み出す種を売っているのかもしれない。

ビジネスプロデューサーの目には、目の前の商品だけでなく、その背景が鮮明に映るのだ。

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