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世界的恥ずべき行為、剽窃・盗作を防止するサービス「Turnitin」

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宿題代行や卒論代行業者が増加する日本

 

夏休みに、テレビで宿題代行業者の特集が組まれた。小学生の宿題から大学生のレポートや卒論まで、「宿題」という枠で、1問数百円、ドリル一冊数千円というものから、30万円の卒論まで、、幅広い依頼があるという。

放送直後から、教育評論家で法政大学教授の尾木直樹氏、通称「尾木ママ」が、自身のブログで「子どもたちに対しては『教育犯罪』そのものです」「れっきとした詐欺罪です」と強い口調で批難し、「子どもに詐欺の正当性を教え、お金でなんでもできるという歪んだ価値観を教えることになります。子どもの学力を奪い誤魔化すことになりますね」と述べ、やりたくないことは金で解決するとした姿勢を子どもに植え付けてしまう危険を説き、学力低下の要因となり得るとの持論を展開した。
インターネット上を中心に宿題を業者に依頼することの是非をめぐって激論が巻き起こっている。

タレントの西川史子氏が、「西川家の家訓は『99.9%はお金とコネで解決できる』」と、子どもの頃から、絵画の課題は美術家を雇って描かせるなど、受験に関係のない科目については宿題を外注していたと自らが公共の場で言い放った。

 

先進国では剽窃・盗作行為は恥であり犯罪行為

 

先進国の大学では、入学直後から盗作防止教育を徹底して叩き込み、1回でも盗作が摘発されると、その人物の全ての論文が否定される。

剽窃(plagiarism)とは、語源がラテン語「plagiarus」で「誘拐」を意味する。米国ハーバード大学の学生ガイド・ブックでは、剽窃を「他人の思考(brainchild)を盗む誘拐行為」と規定し、個人の道徳性を重んじるより先に、性悪説に基づき、徹底した予防教育と厳しい制裁で剽窃を追放している。

ハーバード大学行政大学院(ケネディー・ロースクール)の新入生歓迎式場では、「毎年3,4人は同級生と一緒に卒業できない。剽窃のためだ。『ミス』も認められない」と警告した。
歓迎行事の半分以上が剽窃への警告で埋め尽くされたといわれ、ハーバード大学の在学生は学期ごとに、「剽窃をすればいかなる処罰も甘んじて受ける」という「学問の正直性メモ」に署名することになっている。

さらに欧米の大学では、韓国を中心に東アジアからの留学生のレポートには、注意を払っている。

韓国から家族でアメリカに移住した韓国人の青年は、入学したバージニア大学から医大に進学するため、化学の講義を受講した際、友人の実験報告書からいくつかの文章を書き写して宿題を提出した。
担当教授は剽窃行為を指摘し、「絶対にしてはいけないタブーを破った」と言って、懲戒委員会にかけ、無期停学の処分にした。米国の大学では剽窃事実が成績表に残るため、他の大学への編入もできない。剽窃すれば無条件に退学させられ、「知らなかった」、「ミスだった」という言い訳は通じない。
彼は、何度も謝罪文を送ってが、大学側は全く応じることなく、罪の撤回は行われることがなかった。

世界がグローバル化し、世界各国で活動するためには、ルールとして、剽窃に関するグローバル・スタンダードを知らなければならない。東アジアでは、欧米と違い、小さい時からの剽窃防止教育を受けてきていないために、地域全体が「剽窃共和国」と呼ばれ、国際的大恥をかくことにもなる。

フランス・パリの大学大学院生は、論文を書く準備をする前に教授から「剽窃に気をつけろ」と言われる。
教授たちはコンピュータ・プログラムで論文のみならず、レポートまで剽窃があるかどうか、いちいち調査するからだ。
フランスでは国が授与する学位の論文を剽窃したり、卒業試験でカンニングをすれば、5年間、運転免許試験を含め、すべての国家試験を受けることすらできない。

日本でも、京都大学農学部の教授が、他の学者の論文を剽窃して本を出し、辞任に追い込まれ、出版した本に対しての謝罪文を全国300以上の図書館や出版社に送った。

 

剽窃・盗作行為がにわか景気産業になっている

 

『カレントアウェアネス-E』(ISSN 1347‐7315)E221によると、大学生の剽窃行為についての実態調査が行われ、英国では4人に1人の割合で剽窃行為の疑いがあると報告されている。

インターネット上ではレポートを売るサイトも多数存在し、様々なテーマに関する数十万ものレポートを取り扱っているサイトもある。オーダーメードのレポートを作成するサービスでは、1ページ当たり55ドル(約6,100円)もの破格値を支払う学生も存在する。
こうしたサイトの多くは広告収入によっても利益を得ており、剽窃行為がにわか景気産業になってしまっているとの見方もされる。

剽窃行為の増加については、インターネットの普及により、図書館で書籍を探し調べる手間なく、検索エンジンが数秒で探し出した関連サイトを「カット&ペースト」することに、剽窃や盗作の意識の有る無しに関わらず、簡単にできるということにある。

意図的にしてしまう原因は、大学を仕事を得るためのルートとしか考えていないがために、勉強することが目的ではなく、学位だけがほしいという考えに起因するものが挙げられる。

海外の大学では新入生に対する盗作防止の教育に力を入れており、論文の書き方は1年生の必修科目で、1学期をかけて徹底的に
指導される。そのため、1行でも他人のものを流用するときには、その出処となる文献や論文のページまで明確にする習慣が身についたといい、「盗作は犯罪」という言葉は英国での学生生活4年間に、数え切れないくらい聞かされたという学生の言葉もある。

米国UCLAを卒業した女性は「欧米では盗作に対して非常に敏感なので、他人の文章を勝手に書き写すことなど 考えたこともない。韓国でも米国でも、盗作が摘発されるケースは決して多いわけではないが、その理由が違う。韓国では盗作の 摘発に関心がないからで、米国では誰も盗作しないからだ」と語る。

 

剽窃・盗作行為をチェックするソフトウェア

 

Turnitinというソフトウェアは、1962年にカリフォルニア大学バークレイで4人が創作した、オリジナリティチェックと盗作防止サービスを提供しているものだ。

学生(Student)、教師(Instructor)、管理者(Administrator)の立場で利用可能で、それぞれに利用マニュアルが提供されている。

Turnitinは、135ヶ国以上の中学校、高等学校、大学などの教育機関で使用されている。英語以外に中国語、日本語、スペイン語、フランス語、ドイツ語など30以上の言語で利用でき、1億3,000万以上の学術書や刊行物からの論文、160万名以上の講師、450億以上のウェブページ、1千万以上の教育機関、2億4千万名以上のライセンスを持つ受講生がいる。

また、iThenticateも同様に、Webページや学術データベースをはじめとする膨大な情報と、対象の著作物の文章を照合して、その類似性を簡単にチェックできるオンラインツールだ。

どちらも、検査したい著作物を登録するだけで、剽窃や盗作と疑わしき箇所がスピーディーに検出・表示され、その箇所について問題の有無をすぐに確認することができる。
また、過去には、Google検索等で、文章をひとつひとつ検索したり、記憶をたどりながら査読したりしてきた負担の多い確認業務が大幅に軽減される。

 

ビジネスモデルが難しい教育ベンチャー

 

理研のSTAP細胞の一件が、世界的な大問題となったのも、日本と世界との感覚の差もあるのだろう。剽窃や盗作という不正行為は、著者やその所属組織、出版機関等の信頼や評価に多大な影響を与える。著作物や学術成果の価値を守るためにも、意図していない剽窃・盗作も未然に防止するプロフェッショナルな意識が必要となる。

現在、海外では、教育ベンチャーがブームで、数多くのベンチャーキャピタル(VC)が投資をしている。
MOOCsなどの教育buzz wordが主要メディアに取り上げられ、一般からの注目も高い。

教育こそが社会にとっての重要課題といわれながら、数百年にわたって、時代遅れな同じスタイルが繰り返されてきた分野に変化の兆しが現われてきた。が、教育ベンチャーはビジネスモデルが難しい。

スタートアップの価値創造とは、お金を稼ぐことを目指すのではなく、何らかの対価を払ってもらうに値する新しい事業を作ることだ。
ただ、その対価をお金で表わすのが手っ取り早く、VCは基本的にお金をメトリックス(測度)にしている。

教育の価値創造は、すぐにみえる対価に換算できないところが大きく、本当に優れた教育は30年50年経った後に花が開くものだ。
それに対してベンチャー企業/ベンチャー投資のモデルがどのように貢献できるのか、イノベーションを起こす他のモデルがあるのかは今まさに試行錯誤の時であろう。

現在、VCが短期的に回収しようとしているビジネスモデルは、学習プロセスから取得できる個人情報/ビッグデータ狙いが多い。学習履歴を元に優秀な人材を探し、その人材を紹介するなどだ。

あるいは学校などの教育機関にできるだけ大規模に食い込み、はじめは無料ないし、ごく低価格で教材を提供し、その教材の良さを理解してもらい、ロックインできた時点で、投資回収に入るモデル。
しかし、こちらも、学校での採用プロセスは12-18ヶ月以上かかることが少なくなく、VCの時間軸にはなかなか合わない。

 

ビジネスプロデューサーにとってチャンスか?

 

大学以上の高等教育を受けるためのコストは、世界中どこをみても、過去30年間増加する一方で、しかも、世界的な傾向としてそれが職に結びつかなくなっている。

宿題代行ビジネスが暗躍する日本社会は、世界的な先進国の剽窃行為への処罰と反比例し、世界的な立場を急落させる恐れがある。

過去、有名大出身という「スタンプ(ラベル)」によって多くの恩恵を受けたことは明らかだ。それらのスタンプには、何を学んだといった機能明示的なバッジ以上の意味があり、暗示されるポテンシャルが社会的に評価される側面はあるので、有名大学の意味がなくなることは当面ないだろう。

とはいえ、そのスタンプをもった人間の質が、真の学びや好奇心をもたない人間であることが露呈していけば、スタンプをもたない真の学びを得た者こそが、優秀であるという結果を導き出すかもしれない。

ある程度同じ方向を向いている優秀な人たちが高密度で集まったときの学習効果やアイデアは、勉強からは生まれてこないということを、社会に出た多くの人は実感するであろう。

MOOCsの修了証は、どこで学んだかよりも、何をどういう風に学んだかが明示され、企業の採用時に評価されるようになる可能性を含んでいる。

特にIT企業の採用の仕方は、近年、いわゆる普通の就職活動による採用方法とは変わってきている。

宿題を代行させたり、剽窃行為をする人間は、ビジネスでは、お金で人を使う社長か、他者のアイデアを盗み、価格を安くして商売をするようなものだ。

そんな企業だらけになっては、成長は見込めないのは、小学生でも分かる計算だろう。

企業にとっても、スタンプよりも、今、必要な即戦力であり高度な技術をもった人財を使った、スピードあるビジネスを行わなければ、世界の中で負け組となることに危機感を覚え、教育は、個々で身につけてもらい、すぐに、そのプロジェクトのスピードに合わせて、あるいは、皆をリードして走っていける人を求めている。

ビジネスプロデューサーの中には、ある分野に秀でた能力をもつ者がおり、教育への技術の採用に積極的な企業に、メンターとして招かれることもある。

現在考えられているよりも早く変化が起こるポイントを発見できる可能性も出て来たのかもしれない。
変えられない教育も、企業の採用姿勢が変わることで、一般的な高等教育に大きな変化をもたらす可能性がある。

BPA LIVE Vol.32では、3つのプロジェクトのリリースの中、こうしたチャンスをビジネスプロデューサーが手に入れやすい場にいるというプレゼンも行われる。

ビジネスプロデューサーこそが、日本の教育をグローバル社会で負けない教育と採用の道を創り出すのかもしれない。

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