無動力歩行支援機器「ACSIVE」発売開始!
名古屋工業大の佐野明人教授と義足メーカー今仙(いません)技術研究所(岐阜県各務原市)は9日、共同開発してきた、ばねの力を利用した歩行支援機「ACSIVE(アクシヴ)」を、販売開始すると発表した。
モーターなど電気的な動力に頼らない仕掛けで、世界初の実用化となる。
重さは、約550グラムと軽量で、充電や、電池切れのような心配もない。
雨に濡れる程度ならまったく問題もなく、電子デバイスが一切ないので、壊れる心配はない。
そして、体への負担を減らして長時間使えるのが利点。
利用者としては、脳血管障害等で片脚にまひが残るといった歩行機能が弱い人の使用を想定している。
定価は18万円(税別)で、全国の病院などで販売する予定だという。
ACSIVEは、ヒトが意識することなく歩行する動きと同じ動きで、受動歩行と呼ばれ、これまでのロボットのように、重心の置き方に視点を置いた歩行モーションの分類に含まれるのではなく、2本足(並列に並んだ4本足も含む)で歩行しようとする際に、自然と生じる「物理(自然)現象」や、歩行の「原理」といってもいい動きを利用したものだ。
1990年に、カナダのTad McGeer博士が発表したもので、足の付け根、ヒザを軸とする2重の振り子運動を利用し、少ないエネルギーを用いて効率よく歩く方式の歩行のことをいう。
また、わずかなスロープを設ければ、位置(重力)エネルギーを利用して、無動力の歩行装置でも延々と歩き続ることが可能だ。
動画にあるように、障害による影響で歩行が困難な人は、足が「水の中にある」感じや、地面の感触が「スポンジを踏んだ」感じなどがあるという。
ACSIVEを装着することで、完全ではないが、そうした感じを消すことができるという。
また、最初の一歩の踏み出しが、非常に重たく、踏み出すことができない人が多いが、その一歩が、装着することでとても軽くなるという。
普段、歩くことに対して、自分の動きを意識することもないだろうが、改めて、二足歩行で歩くという人間の不思議さを、このACSIVEが体現してくれているようにも感じる。
ACSIVEのデザインは、動画を見てもわかるように、実際に装着して、試してもらった人の声を反映している。
佐野教授は、最終的にはメガネがファッションとして扱われるようになった現代のように、健常者でも装着して見たくなるような、ファッション性を持たせていきたいと考えている。
障がいをもつ人はもちろん、特に女性は、機械的なものを身につけて、他人からの目に晒されることに抵抗を感じる人が多い。
だから、見えないように、気づかれないようにと、デザインを地味にする方向に向かうのではなく、かといって、カラーバリエーションを増やせばいいというものでもなく、福祉機器というイメージを払しょくするようなデザインを目指している。
例として、高齢者のスポーツ・レジャー支援用に登山に利用してもらうことも可能だ。
本格的な登山の際、足腰が弱ってきた高齢者にとって、重い荷物を背負うことは非常にハードだ。それをカバーして自分の足で登山できるように利用することもできる。
動画で語る佐野教授の姿には、ビジネスプロデューサーに通じるものがある。
これまでにも、自然や、ハチ、アリ、鳥などといった生物の動きや行動からヒントを得て、ビジネスモデルや、プロダクトを作ったビジネスプロデューサーたちがいた。
それらの人々に共通するのは、「物理(自然)現象」や、ものごとの「原理」に逆らわずに、それを尊重して、ビジネスやプロダクトを生み出しているということだ。
すなわち、デザイン(設計)に歪みを作ることなくビジネスモデルを構築し、それを進めるうちに、出てくる課題をクリアし続けていくことで、自然と成長し、循環しはじめる方向に向かっていける。
矛盾に感じるだろうが、終わりのない、しかしパーフェクトなデザインを創り上げるということなのだ。
BPA LIVE(ビジネスプロデューサーの毎月の勉強会)を通じ、デザインの重要性に、自然と気づける人たちが増えているという。