厚生年金基金解散ラッシュ
2012年2月に発覚した旧AIJ投資顧問による年金消失事件のあおりで、現存する526基金の大半が5年で廃止となる。
4月施行の改正厚生年金保険法によって、企業年金の一つである厚生年金基金の解散ラッシュが始まった。
これは、財政難の基金に解散を促す法律で、財政状況が悪化している基金は解散するか、他の制度に移行しなければならない。
存続にはかなり厳しい財政基準を満たさなければならず、多くの基金は解散を選ばざるを得ない状況で、9割近くが解散を選ぶとの見方もある。
年金受給者の著しい増加が予想され、掛け金を拠出する加入企業の負担が限度を超える恐れがあったとして、関東周辺の小売業約40社、約1万5000人が加入していた関東百貨店厚生年金基金では、2012年8月には400億円近い年金資産を抱えており、すぐに解散が必要な財務状況ではなかったものの、加入企業を交えた約2年の検討期間を経て解散を決断した。
しかも、残された基金の財政は厳しい。12年3月末時点で、約4割が、国に代わって運用している資産に欠損が生じ、いわゆる「代行割れ」と呼ばれる状態にあった。
アベノミクス相場が始まり株価上昇の恩恵を受けた13年3月末でも約2割が代行割れから抜け出せなかった。
多くの基金は年金を独自に上乗せしている部分について5.5%の予定利率を掲げているが、最近5年間平均の基金全体の運用利回りは0.83%にとどまる。
さらに退職者に払う給付金と現役社員が負担する掛け金のバランスも崩れている。
掛け金総額を給付費総額が上回る状況が09年度以降続いている。
そもそも厚生年金基金とは、企業年金制度の一部分で、国民年金、厚生年金保険に上乗せする「三階建て部分」にあたるもの。「代行」と呼ばれる形で公的年金の一部を国に代わって運用し、企業独自の年金も組み合わせて上乗せ給付している。1966年にスタートし、90年代後半には全国で1800を超える基金に約1200万人が加入していた。
ところが、2002年、基金を巡る情勢が一変した。
確定給付企業年金法が施行となり、将来的な基金運営の厳しさを見越し、大企業を中心に代行部分を国に返上したうえで基金を廃止する動きが広がった。
現在残っている基金は中堅・中小企業が業種別に集まって設立した「総合型」がほとんどだ。大企業が単独で運営する基金に比べて合意形成が難しかったことからまだ残っている側面が強いといわれている。
先細りの公的年金の代わりに、厚労省が、企業年金の普及と充実で補おうとしているのが、「確定拠出年金」だ。
私的年金の一つで現役時代に掛金を確定して納め(拠出という)、その資金を運用し損益が反映されたものを老後の受給額として支払われる年金で、掛金は確定した額と決まっているが将来の受給額は未確定である。「日本版401k」とも呼ばれる。
企業型のDCは掛け金を社員が自己責任で運用し、同基金や確定給付企業年金のように会社が損失を補てんする必要はなく、企業も採用しやすい。
現在では、DCのある企業から転職した場合に、DCがない例は多い。その場合、半年以内に「個人型」DCへの移行手続きをしないと、積み立ててきた資産は国民年金基金連合会に移され、塩漬けのまま毎月51円の手数料を取られ続ける。
こうした人々は「401k難民」と呼ばれ、44万人近くに上るといい、放置されたままの積立金は800億円を超す。
04年に厚生年金基金を廃止し、DCを導入した日本出版販売(本社・東京都千代田区)では、毎年社員向けに年金セミナーを開き、55歳、58歳の人には特に丁寧に説明しているという。
個人が、自己資産の意識をもって、的確な情報の上で運用するためにも、情報提供する必要があると会社の責任を強調する。
企業年金連合会の13年調査によると、DC導入企業で継続的に社員への投資教育をしているのは55.2%。
ビジネスプロデューサーの多くは、企業に属さず、個人責任で生きている人が多い。
もちろん、一生涯をビジネスプロデューサーとしての企画アイデアをビジネスにしていくことが望ましいが、DCの個人資産形成のように、立ち上げたプロジェクトの中から、顧問という形式なのか、上場した際の株式なのか、将来へのリスクマネジメントを設計することも重要である。
現実を見て、そうした知識をもつ専門家も、プロジェクトの中に組み入れていくことも大切なことだ。
プロジェクトが事業として成立しはじめた時、プロデュースの先にマネジメントを行う、コミュニティマネージャーとの連携も急がれている。
9月には、ビジネスプロデューサーを目指す人たちのためのワークショップ、及び、ビジネスプロデューサーのプロジェクトを支えるコミュ二ティマネージャーの養成のための基礎ワークショップも開催されるという。
国家保証が揺らぐ現代に、ビジネスプロデューサーのみでなく、国民一人一人が、自らの自立した資産形成を、着実に行わなければならない時代になったといえよう。
PHOTO:Huy Phan