既存営業地域を超えて、東京電力が関西・中部のヤマダ電機62店舗に電力を販売
東京電力は、家電量販店大手のヤマダ電機の関西24店舗と中部地方の38店舗に10月1日より電力を供給することを発表した。
東京電力が首都圏を越えて電力を販売するのは初めて。
上記62店舗はこれまで、主に関西電力や中部電力から電気を買っていた。
東京電力から、数%安い料金を提示された模様。東京電力の完全子会社テプコカスタマーサービス(東京都江東区)が、民間企業の工場の自家発電設備などから電気を調達し、ヤマダの店舗へ安く供給する。
電力小売り自由化が進むなか、地域を越えた電力会社の競争が本格化し、電気料金の引き下げが広がる可能性がある。
ヤマダ電機は、電気料金を年間で数千万円程度削減できるとみられ、料金支払いに伴う事務作業を減らせるメリットもある。契約電力は1万9千キロワットと、大規模な工場10カ所分に相当する大口契約となる。
またヤマダ電機以外にも10社近くと販売契約を結ぶ計画。東京電力は10年後に首都圏以外で1700億円の売り上げを目指す。
東京電力売上高の推移 ⇒ http://www.tepco.co.jp/company/corp-com/annai/gaiyou/subwin04-j.html
主要な経営指標等の推移 ⇒ http://www.tepco.co.jp/ir/data/keieishi-j.html
電力自由化とは、電力利用者が大手電力10社以外の事業者から電気を購入できるようにすることで、2000年から開始し、徐々に適用範囲を広めている(制限を緩めている)。6月11日に、電力の小売りを全面的に自由化する改正電気事業法が国会で可決成立し、2016年からは、自由に電力会社を選べるようになる。
ただし自由化対象の96%は依然として大手電力会社が供給しており、現状は工場・ビルなどの大口契約者以外は新規参入の電気事業者と契約できない。しかし、総電力需要の6割が自由化される見込み。
経済産業省が、2013年10月に発表した「電気事業法の一部を改正する法律案の概要 」のステップとして、改正電気事業法の第1弾が、2013年11月に成立した電力システム改革法で、電力事業への新規参入や電気料金の設定について自由化すること、送配電部門の分離を実施することなどが盛り込まれた。
6月11日の改正は、電力システム改革の第2弾に位置付けられるもので、電力小売の全面自由化に必要な措置が定められた。
この法改正によって、2016年以降、利用者は好みの電力会社から自分にあったプランを選択できるようになった。
経過措置として電気料金の規制は当面継続されるが、第3弾の法改正が行われ、料金が完全に自由化されれば、各社は自由な料金設定が可能となる。
多くの企業が、電力小売事業への参入を表明している。
これまで地域独占にあぐらをかいていた電力業界が、自由化によって風通しがよくなり、様々なイノベーションを起こす可能性をもつことは、評価すべきではある。
とはいえ、利用者が注意すべきは、自由化すれば無条件に料金が下がると考えるのではなく、選択肢が増えるということが自由化の本質的なメリットであることをよく理解しておかねばならない。
自由化には、大幅に値上がりすることもあり得るということもある。自分が選択し利用していた電力会社の経営が苦しくなり、別の電力会社に乗り換えなければならない事態が発生する可能性もある。
例えば「電気の料金が半額になるので乗り換えませんか?」と営業に来られ、電気会社を乗り換えても、電気というライフラインの場合、不具合が起きました、とか、電気が一時的に使えなくなりました、ということがあれば、安くなった料金が本当に得になるのかということも考えられなくもない。
自分や自社が経費の削減につながったとしても、電力料金の不毛な価格競争になっていって電力会社そのものが疲弊していくという可能性もある。
日本経済の疲弊のひとつに、あり得ない「価格競争」によって、企業が存続できなくなっているという事例もある。
とすると、結局は、体力のある会社しか生き残れないか、海外からの外資の企業が、日本のインフラを握っていくということも考えておかねばならない。
東京電力は、電力使用のデータ解析を手がけるエネルギーベンチャー、米オーパワー(欧米で電力やガス会社93社の公益事業パートナーと取引をし、8つの国で3,200万世帯以上の顧客へのサービス提供に協力し、クラウド・べースのソフトウェアを公益事業業界に提供し、ビッグデータ解析と行動科学を組み合わせ、エネルギー使用量を把握する手法に強みがある)と業務提携した。
毎月の電気ご使用量のご確認や顧客のライフスタイルに合った料金メニューのご提案、省エネアドバイスの提供などを行う「でんき家計簿」を提供し、9月末までに会員を100万件にまで増やす計画。すでに80万件を突破している。
(※「でんき家計簿」は、2021年1月31日に終了。現在(2021年10月確認)は、「くらしTEPCO」を提供)
東京電力カスタマーサービスでは、
「我慢せず快適に過ごしながら、最も効率の良いエネルギー消費を提案するとともに、さまざまな企業と家庭を結びつける『暮らしのプラットホーム』にしたい」
といい、スマートメーター(次世代電力計)が導入によって、30分ごとの電気使用量を把握し、東京電力から、同じような家屋、家族構成の世帯分析によって、電気使用量を比較し家電の使い方の無駄や、家の断熱材の老朽化の発見など、具体的に節電策を提案できるとしている。
省エネ家電の紹介をし、東京電力の新たな収入源になる新規ビジネスにつなげていこうとしている。
今回の、東京電力地域外電力小売販売に対して、ネット上では、ユーザーから以下のような声が上がっている。
特に原発の再稼働について、繊細な問題を抱えている今、企業利益を上げる責任も重大ではなるが、こうした声も受け止めた上で、電力自由化の競争で生き残る事業展開を図る必要があるだろう。
「関西や中部に電力を供給できるというからには、東電管轄は電力が足りているのだから、他電力会社は更に余裕が出て、原発がいらないではないか。」
「電力は送電距離によってロスが大きくなるので、消費地に近い所で発電するのが一番効率がいいはず。域外に供給することで、ロスが大きくなる上に、さらに割引するということは、一般家庭の価格に転嫁されるということでしょう。考え違いをしている会社ですね。」
「逆に関西電力が関東の店舗や企業に電力供給したり、基本電力は大手が安定供給するうえで、小口電力供給はベンチャーなども含めて多様な供給体制になると良いと思います。健全な競争から安心を。」
「そんな余力があるなら値上げも柏崎刈羽再稼働もいらないじゃないか。」
東京電力は、東日本大震災後の原発停止の影響で、標準家庭の電気料金が震災前と比べて4割程度増えており、大手電力の中で最も高い。電力小売りの全面自由化が始まれば、顧客離れが進む可能性もあり、サービスの充実化は競争を勝ち抜くための不可欠な条件といえる。
しかし、そのサービスが、顧客のためでなく、東京電力の新しい収入源を生むためのビッグデータ集積と分析に利用されるとしたら、顧客からの反発は大きいだろう。
一方、海外企業にとっては、7兆5千億円規模といわれる日本の家庭や商店向け電力の小売り市場の開放は大きなビジネスチャンスとして捉えられている。東京電力と業務提携したオーパワーの日本法人担当者は「東電以外のエネルギー企業へのサービス提供も検討したい」と語る。
米国の節電サービス最大手エナノックと提携したのは丸紅だ。エナノックは、全世界に1万4千の拠点を持ち、原発9基分にあたる900万キロワットの電力を削減する能力を誇る。エナノックの日本法人設立に参画し、5年後をめどに、原発1基分に相当する100万キロワット分の節電を目指す。
電力使用量や電気料金などの「見える化」サービスを開始
オリックス株式会社は、2009年より電力小売事業を開始し、現在、東京電力、関西電力、中部電力、中国電力管内で、主に店舗やオフィスビルなどの高圧業務用の事業所を対象に割安な電力を供給する。
電力供給のほかにも、建物の省エネルギー化を支援するESCOサービス、最大需要電力の抑制(ピークカット)や電力使用量の削減をサポートするデマンドレスポンスサービスを提供している。
また、電力小売全面自由化を受け、家庭・商店向けの販売事業に参入する方針を明らかにし、4〜5年で最低でも20万〜30万件の顧客獲得を目指す。自社電源確保のため、石炭と木質バイオマス(木材チップ)を混ぜて燃やす発電所を2カ所新設する方針だ。
ソフトバンクも電力小売事業への参入を表明した。携帯電話やインターネット回線とセットにして電力を割引販売するような販売方法が考えられる。太陽光発電による電力使用も可能であろう。
東京電力は8月22日、各家庭などの電力使用量を計測する電力計関連のグループ会社2社を統合すると発表した。これにより総合特別事業計画(再建計画)で示したグループ13社を5社へ減らす再編が完了する。
傘下の東京計器工業(東京)が電力計の取り換え工事事業を10月1日に東光高岳に譲渡し、10月末までに解散する。グループで年間費用を約8億3千万円減らす予定。
東京計器工業は、東電管内の神奈川、千葉、東京、山梨、静岡の1都4県で事業を展開している。譲渡する事業の社員約60人は東光高岳へ移るが、残る約150人は退職する。
大手電力やガス会社は、火力発電や都市ガスの製造に使う液化天然ガス(LNG)などの輸入価格が下がったため、9月の料金を3カ月連続で値下げする見込み。原燃料費の変動に応じ料金を毎月見直す「原燃料費調整制度」に基づき、標準的な家庭で9月は東京電力が30円程度、東京ガスは25円程度値下げするとみられる。
2011年3月11日東日本大震災による、福島原発事故後、東京電力は日本中、否、世界中からのバッシングを受け、企業理念、体制、風土をはじめ、あらゆる面で、信頼回復を求められている。
電力に関わる仕事を誠実にされてきた社員も多数いる中、失墜した信頼を取り戻すには、真剣に顧客サービスを考え続け、継続のための新規事業について、経営陣は本気の取り組みを求められている。
おそらく、残念ながら、どの企業にもいえることだが、企業内や、過去の信頼失墜の原因になった人脈に頼っていては、将来に向けて、立ち直る体制を創り上げることは難しいだろう。
ビジネスプロデューサーは、マイナスからのスタートだからこそ、大きな飛躍に挑戦できるチャンスであると考える。
もちろん、企業として、今、できることを行うことは大切であるが、信用と信頼を取り戻すためには、経営者は今までの数倍の努力と、思考の変換が必須である。
ビジネスプロデューサーは、そうした問題解決型と新たな価値創造をビジネスに与えるために存在している。
「KDDIも、マンション向けの電力小売り事業に参入」
KDDIは2014年8月27日、9月1日からマンション向けの電力小売り事業に参入すると発表した。新築および既築のマンション向けに、電気料金を従来よりも割安に利用できる一括受電サービス「auエナジーサプライ」を提供する。首都圏エリアから開始し、順次提供エリアを拡大する。
http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2014/08/27/613.html