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真の解決があるのか?アイス・バケツ・チャレンジによるALSを考察する

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アイス・バケツ・チャレンジとは?

 

この夏、世界で、アイス・バケツ・チャレンジ(氷水バケツ被りと訳しているサイトもある)動画が、ソーシャルメディアを通じて拡散されている。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の啓発活動として広まったもので、「ALSアイス バケツ チャレンジ」と呼ばれ、バケツ一杯の氷水を頭から浴びるか、ALS団体に寄付をする(両方でもOK)かをし、次に3人の友だちを指名して24時間以内にチャレンジを促すというイベントだ。

米国で、2014年6月ころから、Facebookで「アイスウォーターチャレンジ」という遊びから始まった。

元々、ALSの啓蒙のために始まったものではなく、米国のローライダーカークラブで流行ったものが発祥と言われており、発祥自体は怪しいものだが、友達などから指名されたら24時間以内に氷水を頭からかぶり、FacebookやTwitterなどに動画や写真を投稿すると「クリア」となり、次の3人を指名できるという、バトン式のチェーンメールの一種だった。できない場合は1万円(米国では100ドル)を寄付しなければならないというルールが決められているが、寄付先などは指定されていない。

Facebookで「ice water challenge」と検索すると多くの公開・非公開グループがヒットし閲覧できる。米国人たちが楽しげに氷水を被る動画や、水を被ることで裸になった姿を動画アップしている者もいる。

 

ALS啓蒙へと広がったきっかけ

 

7月にゴルファーのクリス・ケネディが、「ice water challenge」で、友人から指名を受け氷水をかぶり、米ALS協会を寄付先に選んだ。
ALS患者を夫にもつ彼の従姉妹ジャネッテを次に氷水をかぶる人物として指名し、そこから患者を含むALSコミュニティに関わる人物を中心に徐々に広まったといわれている。

ジャネッテが住むニューヨーク州ウエストチェスター郡のペラムから、このチャリティの影響がじわじわと拡大していった。
同州ヨンカーズに住む元ヨーロッパのプロ野球選手パット・クィンとつながった。彼は2013年の3月にALSと診断され、その経験をウェブでも公開している。彼がソーシャルネットワーク上でこの動画をシェアすると、チャリティはますます拡散されていった。

そして、ボストン大学の元野球選手でヨーロッパでプロ野球選手として活躍していたピート・フレイツへとつながった。ピートはパットより1年早くALSと診断されており、ALSコミュニティにも深く関わりを持っていた。
ピートの母親のナンシーは、彼は出会う人すべてと連絡を取り、友人となり、サポーターを増やして、大きなネットワークを築いたのだという。パットより病状が進行しているピートは友人として支え合っていた。

 

アイス・バケツ・チャレンジの発案者コーリーの死

 

コーリー・グリフィン(27)は、ピートの親しい友人で、彼と共に、このアイス・バケツ・チャレンジをバイラル化してALSの啓蒙に利用しようと発案した。さらに、彼のために、地元ナンタケット在住の仕事関係者や友人に 協力を募り、約10万ドルの寄付金を集めた。

8月16日、コリーはナンタケット島から父親に電話をかけ、マサチューセッツ州ナンタケット島を訪れ、ALS患者への義援金10万ドル(約1000万円)の調達に成功したと、喜んでいた。
しかし、その数時間後、同島の波止場ストレイト・ワーフにある「ジューシー・ガイズ」の2階建てビルから港に飛び込み、脊椎を2か所骨折損傷し、一度は浮いたものの、その後沈んでしまい、二度と上がってこなかったと、地元のナンタケット警察署で発表された。近所の人々は、この行為は昔から地元でよく行われていることで、まさか亡くなるとは思わなかった、と言っている。

父親のロバート・グリフィン氏は、息子を「世界一の幸せ者でした」と称し、「昨夜電話してきて、自分は楽園の中にいると言ってましたよ」と伝えた。 (2014年8月16日 ボストン・グローブ紙)

 

米国のアイス・バケツ・チャレンジ

 

フェイスブックCEOマーク・ザッカーバーグ、マイクロソフト元会長ビル・ゲイツ等々の著名人たちが次々、アイス・バケツ・チャレンジを行った。
20名以上のケネディ一族が一斉に氷水をかぶった際、その中の一人エセル・ケネディ(ロバート・ケネディの妻)は、次に氷水をかぶる人物として大統領のバラク・オバマを指名。オバマは氷水をかぶる代わりに寄付をすることを表明した。

米ALS協会は、7月29日から3週間で1,330万ドルの寄付金を集め(前年同時期の同協会への寄付額は3万2,000ドル)、「これまで、ほとんどの人はALSについて認識が乏しく、資金集めはとても困難だった」「こんな奇抜な方法で支援の輪が広がるとは、感激だ」と述べ、今月21日までに4180万ドル(約43億円)以上を集めた。

 

日本のアイス・バケツ・チャレンジ

 

日本国内では、8月16日にSHELLYがチャレンジを行ったことを発表したことを皮切りに、著名人のチャレンジが相次ぎ、孫正義や山中伸弥などが氷水をかぶるなど、広がりを見せている。日本ALS協会によると、8月18日から26日(午前)の間に、1550万円寄付が集まったという(前年1年間の募金額約 400万円)。
一方で、武井壮のように諸事情によりチャレンジ拒否し、代わりに寄付する事を表明した人もいる。

アイス・バケツ・チャレンジをした著名人
孫正義
三木谷 浩史(楽天)
秋元康
トヨタ社長
山中伸弥(ips細胞)
田村淳
堀江貴文
綾小路翔
乙武洋匡
古田敦也
田原総一朗
田村亮
浜崎あゆみ
渡辺麻友(AKB48)
茂木健一郎
河村たかし(政治家)
浅尾慶一郎(政治家) 
亀田興毅
坂上忍

 

アイス・バケツ・チャレンジの危険性

 

氷水のたっぷり入った重たいバケツをチャレンジする人の頭にそのまま上から落としてしまうといったような事故も発生し、アメリカでは消防車を利用して水を浴びるパフォーマンスを行った活動に協力していた消防士4人が誤って電線に接近して感電したほか、イギリスでは18歳の少年が崖から池に飛び込み死亡した事例も起こっている。
また、妊婦の芸能人が氷水を被ったことで、胎児や母体への影響を考え、著名人がすべきことかという疑問も出て来た。

アメリカ合衆国国務省は、在外の大使や外交官に対し、チャレンジに参加することを禁じる通達を出した。この通達では、エイズやマラリア、結核・天然痘・ポリオ、さらにエボラ出血熱など、ALS 以外の疾病に対しても国として支援を行われていることを挙げ、政府高官という立場の者がこれらの中で ALS だけを特別扱いすることには問題があると指摘している。

 

指名という強制ではないかという意見

 

イベントとして、楽しむ感覚でやる人にはいいが、やりたくなくてもやらざるを得ない強制力を持つチェーンメール(バトン)が、最終的には、指名という意識ではなく、強制されている感覚になり違和感を唱える人も多い。

これらの、広がり方が連鎖販売取引(マルチ商法)の仕組みと同じで、次に3名を指名するということで拡散されることに嫌悪を覚えている人もいる。

ソーシャルメディアの中にあるいじめの相談に乗る大人は、子ども達にある、このような集団のある種の昂揚感にいる中で、指名されて、断りたくても断れない同調圧力の風潮に近いものを危惧する。

大学生が新歓コンパで、「イッキ!」を強要されたり、会社で「先輩の酒が飲めないのか!」といったパワハラにつながる恐れもあるという。

 

ALS広告プランナーが集める寄付サイト「END ALS」

 

難病ALSと闘う広告プランナー・ヒロこと、藤田正裕氏の寄付を集めるサイトがある。
「END ALS」というサイトで、著名人たちが、藤田氏の声の代わりに、ALSを発症した彼の言葉を伝える。
広告プランナーだけに、著名人を使った映画を彷彿とさせる。

彼の自己紹介である。
「20代までのヒロこと藤田正裕は、ニュージャージー、ハワイ、チューリヒ、ロンドン、東京に住み、スポーツ万能で、ロックスターのごとく酒とパーティに明け暮れる広告会社のプランニングディレクターだった。しかし30歳の誕生日直前、不治の病とされるALS(筋萎縮性側索硬化症)が人生を襲う。友人と立ち上げた一般社団法人END ALSは、ALS患者のサポートをしながら治療法を探し、政策提言もおこなう団体。ベッドから起き上がることさえできなくても、目の動きでコミュニケーションをとるアイトラッキング技術によって仕事を続けている。2013年には、著書『99%ありがとう ALSにも奪えないもの』を発表し、多くの著名人が関わるオンラインメディアでの情報発信も話題を呼んでいる。夢は病気を治してハワイでリタイヤし、毎晩の美酒に酔いしれ、ビーチにいながら世界を救うことだ。」

 

ALS患者が求めるものはなんだろう

 

「END ALS」について、寄付の先の不透明さを上げている人がいる。
「END ALS」に関しては、藤田氏の生活を支え、さらに治療への研究へプラスになることに使用される目的の寄付行為であるように見受けられる。

自分を支えるサポーターによって、コミュニティ形成が成され、障害をもっていても、そこが生きていける場であれば、次の同じ状況の人への支えにもなる。
応援者たちも、ALSへの支援はもちろんだが、藤田氏個人へのサポートのために協力をしている。

ALSに限らず、難病、原因のわからない病気、障害をもった者が求めるのは、寄付という、同情や憐れみと異なる、自分だからできる仕事を与えられることではないだろうか。

「END ALS」では、物販を行い、それもまた、藤田氏を支える収入源になるだろう。

寄付で多くのお金が集まることは、運営にとって重要な収入源になる。

しかし、患者自身は、人が誰もが、自分のもつスキルを最大限に生かした役割を果たすことで、感謝と共に与えられる報酬にこそ、生きている実感を感じるのではないだろうか。

 

徳洲会理事長徳田虎雄氏のALS支援

 

徳洲会グループを巡る公職選挙法違反事件で、東京地検特捜部が徳田虎雄元理事長(76)を近く不起訴(起訴猶予)処分とし、一連の捜査を終結する方針を固めたことが25日、報道された。虎雄氏は難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)で療養中のため、裁判で刑事責任を問うのは困難だと判断したとみられる。

なにかとお騒がせの徳洲会理事長徳田理事長は2002年4月1日にALSの発症に気づき、世界23カ国を視察訪問。海外プロジェクトの準備をはじめた。

徳洲会グループは、北海道から沖縄県まで66病院を含む280余の医療施設を展開。海外では、2006年12月にブルガリア・ソフィア市に1016床のソフィア徳田病院をオープン。その他、各国と病院建設を協議中だ。

様々な報道されているような見えないものは数々あれど、自らがALSという病に罹っても、ALSの患者をはじめ、多くの病気の人間のために、病院建設を続ける姿勢は、氷水の入ったバケツを被り、寄付をして満足する世界の〇〇と呼ばれる企業の代表たちと比べ、その土着的な精神は、病を衣を抱えながらも生きる人、生きようとする人の魂さえも揺さぶる。

 

コミュニティこそが、生きるための解決策になるのではないか

 

ビジネスプロデューサーの集合体であるBPAでは、「MS」多発性硬化症(たはつせいこうかしょう、multiplesclerosis)と呼ばれる中枢性脱髄疾患の一つで、脳、脊髄、視神経などに病変が起こり、多様な神経症状が再発と寛解を繰り返す疾患で、日本では特定疾患に認定されている指定難病を発症したお子さんをもつ仲間がいる。

彼は、医療の業界におり、マニュアル的なステロイドパルス療法を我が子に施すことを懸念し、国で決められた治療を拒み、医療行為を受けさせない児童虐待の親というレッテルを貼られても、我が子自身と、医師としての直感を信じ、与えられた治療でない方法を行い、お子さんが学校に通えるまでになった。

2012年の夏。
TEDのように、BPA LIVEで、お子さんの発症を期に、自分の医師として、自分自身の生き方そのものを問い直すきっかけになり、保険医の資格を自ら返上し、毎日を模索の中で過ごしている。

BPA LIVEでは、舞台にお子さんを上げ、スポットライトを浴びながら、自分のできることの可能性をお子さんに感じてもらおうとした。しかし、会場スタッフから、車椅子を舞台に上げることは、危険だと、ストップがかかった。

本人も親である彼も、そして、舞台を用意した筆者も、その世間の障害をもつ難病患者に対する「無理」という常識に屈した。

誰もが、自分のできることを仕事にし、自分の足で立って生活をしたい。
立てることができなければ、横たわっていても、座り続けていても、人の役に立ちたいと思うだろう。

日本の「アイス・バケツ・チャレンジ」には、お金集めのための広告宣伝に裏で糸を引く存在が見え隠れする。

 

一過性でない持続可能な社会を・・・

 

難病ではない筆者は、患者そのものにはなれないし、100%の理解もできないだろう。

しかし、ゴルファーのクリスが従姉妹の夫の病気のために、ピートが自分と同じ難病に苦しむ人たちのために、コーリーがピートのために、その小さなコミュニティの中から、彼らができることをみつけて広めていったように、決してお祭り騒ぎの一過性のものではない、持続継続する、生きていていいんだよと、言い合えるような仕組み作りを生み出すことが、ほんものの社会貢献といえるのではないかと思う。

今回の浮ついたイベント的な一過性の寄付は、2011年に起きたタイガーマスク騒動も思い起こさせる。
与える側と受け取り側のミスマッチを減らし、互いを理解し合える環境作りを提供し、そして何よりも、大事なのは、良いと思う事に対して、具体的にどう思うか?何ができるか?を問いかけながら、遠くにいる不憫な人よりも、自分の周りの人間の力になって行くことではないだろうか。

ビジネスプロデューサーは、ブームという一過性のものではなく、循環し、持続継続可能な仕組みをもったビジネスを創り上げることを使命としている。
ビジネスプロデューサーから、よく聞かされる言葉に次のような言葉がある。

「自分が死んだ後にでも、終わることのないものを。その時空間にいる人間が創り上げていけるものを残さねばならない」と。

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