安倍晋三首相「知的財産推進計画2014」で産業強化につながるか?
政府は20日、社員が仕事で得た特許権を当初より企業が所有可能にすることや、企業の営業秘密の保護を強化する方針を盛り込んだ「知的財産推進計画2014」を決めた。
産業強化に向けた重要施策として、24日に閣議決定する新たな成長戦略に盛り込むという。
安倍晋三首相はこの日の知的財産戦略本部の会合で「世界最先端の知財立国を実現するため、必要な法改正や体制強化にスピーディーに取り組む」と述べた。
現行の制度は職務で発明した特許権は社員の帰属となり、企業が特許を譲り受ける際は「相当な対価」を支払う必要がある。この原則は残しつつ、一定の条件を満たした企業に限り、「会社のもの」にできる特例をもうけ、発明に見合った十分な報償金を支払う仕組みがあることを条件にする見込みだ。
現行の制度とは、仕事上行った発明(職務発明)であっても、「特許を受ける権利」は最初は発明をした社員のものである」というもの。
「特許を受ける権利」とは、その発明について「特許出願をすることができる権利」のことで、譲渡することができる。
企業は、発明について、社内規則や契約に基づき、発明をした社員等から、「特許を受ける権利」の譲渡を受け、特許出願をするのが一般的で、出願書類の作成や手数料の支払いなどは、社員ではなく、企業が行っている。
従って、「仕事で発明した特許」が「すべて『社員のもの』」とはいえない。
政府方針として、「社員に十分な報償金を支払う仕組みがある企業に限って認める方向」 と述べているが、「残業代ゼロ法案」と同様、産業界からの要請とのズレがある。
企業としては、新製品開発を業務として給与を支給されている人間が、発明が特許化されるごとに別途報償を受けることに対しての不満をもっている。
職務発明の対価を求める訴訟となった青色発光ダイオードやテプラなど、企業側に一定の金額が払わされ、産業界は、初めから発明は企業のものに、さらにインセンティブも抑制したいと考えている。
開発に当たり、設備、研究材料、共同研究者、補助者と、会社が経費を負担し、開発業務のために給与を支払い、さらに、ビジネスとして成功させるために、広告宣伝、材料仕入、輸送・販売ルート、在庫施設など、企業がリスクをすべて負っていながら、「十分な報償金を支払う仕組み」を求められることは、企業と社員の軋轢を生むことになりそうだ。