個人の発明が知財立国を作り上げる時代に期待
街中で、電車のなかで、iPod(アイポッド)で音楽を楽しむ人の姿をみない日はない。
円形の二つのタッチセンサーとクリックボタンを組み合わせた絶妙な操作を可能にした「クリックホイール」と呼ばれるユーザーインターフェース(UI)。2004年発売の「アイポッド・ミニ」で初めて採用し、曲の選択や早送りなどの操作に使われている。
東京都の発明家斎藤憲彦さん(56)が米アップルが特許権を侵害しているとして、アップル日本法人に100億円の損害賠償を求めた。
9月26日、東京地裁(高野輝久裁判長)は、同社による特許権侵害を認め、約3億3600万円賠償を命じる判決を言い渡した。
斎藤さんは自分の発明をアップルに売り込み、アップルは強い関心を示したが、ロイヤルティなどの条件面で折り合わず交渉は決裂した。その後、クリックホイールのアイポッド・ミニが発売。
アップル側は地裁判決を受けて即日控訴。高裁の審理の結果が待たれる。
しかし、これまで日本の特許は、大企業が特許申請の数で個人の特許を潰してきた。
個人発明家の特許の価値が認められた今回の判決は、個人発明家にとって朗報かもしれない。
本年6月、安倍内閣が「知的財産政策に関する基本方針」を閣議決定された。
企業の研究者ら従業員が仕事で発明した「職務発明」について、現在は従業員側にある特許権の帰属を見直し、企業への移行するという。
産学連携による企業と大学の共同研究から生まれた特許を企業が実施する際に不実施補償という制度もあるが、これも上手く活かされてはいない。
真に能力のある人材は、組織を離れ、会社を作って研究、発明を行い、特許を保有し、大企業に会社ごと売却という方法を選んでいくのではないだろうか。
知財立国ニッポンは個人の力によって創り出されるのかもしれない。
(画像は、wikipediaより)