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デザイン思考を実践するiPodの父トニー・ファデル

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BPA NEWS「GoogleとNestのM&Aはスマートハウスの実現を早めるだろう」は、ご覧いただいたであろうか?

Googleに現金32億ドルで買収された家庭用機器メーカーNest Labs。
トニー・ファデル(Tony Fadell)氏とマット・ロジャース(Matt Rogers)氏の共同創設者は、共にアップル社に勤務し、ファデル氏は「iPod」の発案者であり「iPodの父」として知られている。

ファデル氏は、「iPod」というイノベーションを起こしたデザイン思考をもつ人材である。

日本ビジネスプロデューサー協会理事長の伊藤淳氏が、BPA LIVE Vol.19にて「デザイン思考」について語ったことを思い出してほしい。

亡くなったアップルの前CEOであるスティーブ・ジョブズ氏は、フィリップス・エレクトロニクスにいたファデル氏を、自ら引き抜いた。

2001年1月。
iPodの開発は始まった。
発売時期は、同年クリスマス商戦前という、期限を切られたスタートだった。

ファデル氏の頭の中は、ゴールまでを3つの段階に分け、開発に着手した。

まず、最初に世界の人々は、どんな風に音楽を楽しむのだろうという、ユーザーの潜在ニーズを求めた。
その結果、「世界にある音楽をポケットに入れて持ち運ぶ」というビジョンを生み出した。

2001年10月24日のアップルのiPod発表のプレスリリースである。

1,000曲をポケットに入れて持ち運べる超小型MP3プレーヤー

アップルは本日、最高1,000曲の音楽をCD品質のままポケットに入れて持ち運べる約185グラムの超小型MP3プレーヤー、「iPod™(アイポッド)」を発表しました。iPodは、アップルの伝説的とも言える使いやすさと、Auto-Sync(オートシンク)機能を組み合わせたポータブルミュージックデバイスとして先進的な設計です。Auto-Sync機能により、iPodをMac®に接続すると、すべてのiTunes™(アイチューンズ)の登録曲とプレイリストが自動的にiPodにダウンロードされ、常に最新の状態に保たれます。
「アップルは、iPodにより、自分の音楽コレクションを全部ポケットに入れて持ち運び、どこででも聞くことができるというまったく新しいカテゴリーのデジタルミュージックプレーヤーを発明しました。iPodは音楽を聞くという行為をまったく違った経験に変えてしまいます。」と、アップルのCEO(最高経営責任者)、スティーブ・ジョブズは語っています。

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ファデル氏らは、ユーザーの潜在願望は何かを観察し、チームで議論し、ビジョンを探り当てた。

そして、コンセプト作りのために、心理学者、人間工学の専門家、技術者等々、35名によるエキスパートを集めたチームを作った。
「これまでの音楽の提供方法に変革を!」と、その目標を共有することで、各自の本音と意見、発想を引き出し、その結果が、回転する円盤のマウスにより画面の変更操作を行える「スクロールホイール」や、PCとiPodを自動同期させる仕組み「Auto-Sync」を生んだ。

BPAでは、ビジネスプロデューサーを以下のように定義している。

ビジネスプロデューサーとは、既成概念を打破する発想力を持ち、異なる価値観や才能あふれる専門分野の人たちを有機的に関連づけ調整する指導者のことです。
彼らは、価値あるビジネス創造を使命とし、現在、閉塞し問題に満ちている社会の歪みをビジネスチャンスに変える誇り高き勇者でもあります。

最後に、ファデル氏はプロトタイプの制作に着手した。
コンセプトの視覚化と評価・フィードバックを行い、出てきたプロトタイプは約2カ月間に100を超えていたとされる。

iPodは、販売時期が11月10日から17日に延期されたことも逆に、それを求める大衆の心に火を着けた。
瞬く間に世界中で受け入れられ、広がっていったのだ。
Appleの製品は、ジョブズ氏の創造性がもたらした製品といわれるが、iPodは、ファデル氏のデザイン型人材と、彼によって生み出された共創の場がイノベーションをもたらしたといえよう。

もう一度、BPA LIVE Vol.19を振り返ってもらいたい。

創造的思考-論理的思考-デザイン的思考という流れで伊藤理事長がされたことを。

思考とは何だろう。
人間の頭脳は、同時に二つの方向へと働く。
比較選択を行い判断をする思考。
そして、分析、創造、予想、予見、アイデアを生み出すための創造的な思考。

判断することに偏ると、新しいアイデアを生み出すことより、役に立たない理由、出来ない理由を探し、未知への扉を開くことができない。
創造的な考えは封じ込められ、あら捜しに近い可否判断しか出てこない。

iPodが生まれるために、100を超えるプロトタイプが創出され、そこからiPodは生まれた。
1/100だ。

BPAには、失敗をおそれるな!というキーワードがある。

BPA LIVE Vol.4「共育」にあるように、何度でも挑戦が許される場が、創造を可能にし、共創の場を生み出す。

新しいアイデアを考えるときは、役に立つかどうかの判断を下すより先に、役立つように出来るあらゆる方法を考えることが大切だ。

もちろん「現実は、我々が直面している課題は、そんなに単純ではない」といいたくもなるだろう。

しかし、それで何が解決できるといえるだろうか。
課題の本質にたどり着くためには、既成概念を捨て、まっさらな心で物事に関わり考えることからしか始まらない。

それが、創造的思考-クリエイティブシンキングである。

そして、次に論理的思考へと進む。

こども時代に習ったであろう「5W1H」の質問だ。

WHEN(いつ)
WHO(誰が)
WHERE(どこで)
WHY(なぜ)
WHAT(何を)
HOW(どのように)

「いつ」「どこで」「誰が」「なぜ」が、明らかになれば、「何をどのようにするか」だけを考え、すぐに実行、行動すれば結果が出る。

ビジネスプロデューサーである伊藤理事長の口癖は「WHY(なぜ)を探せ」である。

「いつ」「どこで」「誰が」「なぜ」を、いくつも想定することで、課題そのものが論理的思考によって浮彫にされ、「何をどのようにするか」という設計-デザインが生み出される。

デザイン思考は専門分野に長けた各個人の専門性を否定するものではない。
その専門性を尊重した活躍の場を提供するための思考法だ。
特にコンセプトづくりでは、参加メンバーの専門性が互いに刺激し合うことで、新たな発想が生まれる。

BPA NEWSで紹介した「コンター・クラフティング」は、完成された建築の設計がきちんとされているからこそ、3Dプリンターというオートメーション化で、巨大な住宅までが建てられるのだ。

デザイン思考とは、創造的思考と論理的思考を土台に、設計がなされ、「何をどうすればいいか」ということが、すでに頭の中で築き上げられている。

こうした変革を起こす人材を後押しする環境を作り上げる必要がある。

人は、多忙な日々を送っていると、何かを作り出すことに当てる時間などなくなり、やらねばならないことに追われ、自由な発想をする時間がなくなる。
同じく、事業創造は簡単にできるものではなく、多くの企業では利益の大半は既存事業が生み出しており、それだけでいっぱいいっぱいになっているというのが現状だろう。
中長期の利益を生むためには、既存の事業と並行して、革新的な事業創造に取り組む姿勢が必要だと分かっていても出来ないという現実があるだろう。

だからこそ、ビジネスプロデューサーの時代といえる。

BPA LIVEと、毎日のBPA NEWSが、ビジネスプロデューサーとなる皆様への血肉となる学びになっていくよう努力を続けたいと思う。

Photo wikipedia

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