仮装通貨ビットコインの課税基準を作ったシンガポールIRAS
シンガポールの税務当局(The Inland Revenue Authority of Singapore、IRAS)が、2014年1月8日、ビットコインの課税に関する、簡潔なガイドラインを示した。
IRASのガイドラインでは、
・ビットコインは通貨として扱わず商品の一種とみなす。
・ビットコインの価格変動によるキャピタルゲインは 課税対象とする。ただしシンガポールでは税率ゼロ。
・ビットコインの売買は、商品の売買と同じとみなし、物品税(Goods and Services Tax、GST)を課す。税率は7%。
・ビットコイン取引が企業の長期金融投資に該当する場合、物品税は課せられない。
・ビットコインが電子上の情報サービス(アバターなど)の購入に用いられた場合、物品税は課せられない。
と明記された。
シンガポールは香港の次に自由な経済圏として位置づけられている。(米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団が14日発表。「経済の自由度」を測る指数、香港が20年連続で2014年も世界一。二位はシンガポール、三位のオーストラリア。日本は順位を一つ下げて25位だった)
シンガポールIRASが、仮装通貨ビットコインの課税について明確なガイダンスを示したということは、他国にも大きな影響を与えると考えられる。
キャピタルゲインを目的にビットコインを現金化する動きが加速する可能性が高まった。こうした場合、シンガポールはビットコイン業界の中心地となる。
また、IRASがビットコインを通貨としてでなく商品の一種であると明確にしたことで、この考え方が広がれば、ビットコインは金融資産ではなく電子情報サービスの一種として、日本におきかえると、金融商品取引法の対象から外れることになる。(日本の監督官庁は金融庁ではなく経済産業省。)
昨年は、ビットコイン相場の急上昇が話題となったが、実体については、よく分かっていない。
ネット上だけに存在する通貨について、誰も規制したり、課税したりする方法に関して、なんのルールもなかったのだ。
昨夏、ドイツはビットコインを個人のお金として対応を決めた。
個人の売上やキャピタルゲイン税を通してビットコインに課税するというもの。
スロベニアでは、(通貨の利用形態にかかわらず)すべての収入は一般所得税の課税対象となるという声明を発表。
が、どちらも、具体的な税法の実施方法や、ビットコインを決済に採用する仮想店舗への課税方法などがないままだ。
米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、「ビットコインのような仮想通貨には合法的な利用があり、禁止されるべきではない」と述べている。
が、こちらも、米国税庁からの明確な指針はなく、法的にはグレーゾーンである。
最終的には、ビットコイン利用者が課税を受け入れることで、世界的な代替通貨となる可能性が高い。
当初はどの国も異なる税法を持ち、多国間でのビジネスをより難しくするだろうが、中央銀行から自由となり、その結果、地域社会や利用者とのつながりが強まるという、本物のグローバル経済の可能性が出てくる。シンガポールの新しい税制は、ビットコインの流通の可能性を高めたのかもしれない。
ビジネスプロデューサーにとって、仮装通貨に柔軟な国との取引を考えることは、ビジネスの組み立てに役立つものがあるかもしれない。