日本最高峰東京大学の世界ポジション

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日本最高峰の高等教育を受けることのできる東京大学教養学部英語コース(PEAK)への2014年合格者(同年10月入学)合格者の入学辞退率が7割近いという報道で、世間が驚愕している。

そもそもPEAK(教養学部英語コース)の存在を知っているだろうか?

 

東京大学の説明では、以下のように紹介している。

教養学部前期課程に設置される「国際教養コース」(International General Education Program)、および、教養学部後期課程に設置される「国際日本研究コース」(International Program on Japan in East Asia)、「国際環境学コース」(International Program on Environmental Sciences)で、合わせてPEAK(Programs in English at Komaba)と呼ばれます。

PEAKは、基本的に初等・中等教育を日本語以外で履修した学生を対象にしたもので、書類と面接審査によるアドミッション・オフィス(AO)入試により選抜を行います。

このコースの設置は、『東京大学の行動シナリオFOREST2015』(2010年3月策定)において示された、「世界から人材の集うグローバル・キャンパスを形成し、構成員の多様化を通じ、学生の視野を広く世界に拡大する」という重点テーマ(「グローバル・キャンパスの形成」)を具体化するものです。

したがって、本コースは東京大学が全学的に取り組むものですが、具体的なコース設置にあたり、教養教育の充実、発展と、「学際性」「国際性」をキーワードとする先進的教育研究に取り組んできた教養学部が、全学的協力のもとに上記3コースを開設することとなりました。

先に述べたように、本コース前期課程への入学は、学部英語コース特別選考によりますが、後期課程に設置される2コースは、学部英語コース特別選考による入学者だけではなく、一般入試及び外国学校卒業学生特別選考による入学者も進学することが可能です(PEAK第1期生の進学は2014年10月、他の入学者が後期課程2コースに進学するのは2015年4月からの予定)。また、「グローバル・キャンパスの形成」という主旨から、英語コースのカリキュラムは、できるかぎり、全学の学生に開かれたものにする予定です。英語による授業に積極的に参加し、PEAKの学生たちと交流することを通して、グローバルな視野を一層広げる機会が醸成されることを願っています。

 

現役の東京大学の学生・院生が編集する紙の新聞で、年に42回発行している東京大学新聞の、「東京大学新聞オンラインメディア」(公益財団法人 東京大学新聞社編集)の2014年10月3日配信記事に、以下のような記載がある。

 

PEAK志望者なし

本年度進振りではPEAK(教養学部英語コース)に属する二つのコースが新設され、それぞれ定数5が割り当てられたが、両コースとも第1段階・第2段階共に定員割れした。教養学科国際日本研究コースは第1段階で2人の志望者がいたが、第2段階では志望者0人。学際科学科国際環境学コースは第1段階・第2段階共に、志望者が現れなかった。

 

冷静に考えてみよう。
PEAKは、2012年度からスタートし、定員は30名だ。一学年3100名を越える教養学部で、Global 30 として一学年30名程度の留学生は1%にも満たない。

第1期生から、合格者の3割程度は海外の大学に進学し、入学者は7割程度の人数である。
合格者を3割増に取り、募集定員のおよそ10%前後であれば、元々の予想通りともいえる。

 

今回は、その予想を裏切った数であるということ、また学内でも、各コース5名の定員に志望者ゼロであったということを、次なる成長課題として捉えるべきではないだろうか。

PEAKは、世界に東大の教育研究リソースを提供し、グローバルキャンパスを目指し、世界に通用する東大卒業生の育成が主眼目的であろう。

外部公開されている教養学部報 第556号「PEAKとの合併授業を開講」にある松田良一氏の危惧をまとめると以下のような課題が見えてくる。

① 東京大学のPEAKへの宣伝文句と実態の乖離
今、日本で、東大で英語による学部教育プログラムを始めるビジョンやコンセプトは?
他の興味ある講義の受講・別コースへの進学・留学制度・学生寮や奨学金等の受け入れ態勢など、現実の対応はできるのか?

② 受け入れ態勢の不備
PEAKに特化した建物・常勤(専任)教員がおらず、研究環境が整っていない。
PEAK生の奨学金は、三分の一が四年間東大から支給、三分の一は無支給、残りの三分の一は文部科学省から一年間のみ。
「二階に上らせて梯子を外す」に等しいと松田氏は嘆く。PEAK生の失望は、その評判が世界中に広がり東大の国際ランクの低下につながると危惧する。

③ 東大に国際化の意識がない
東大には外国学校卒業学生を対象とする特別選考制度があり、過去、本国の飛び級制度により16歳で中等教育課程を終え、東大に入学した留学生がいた。
飛び級は、単位を取ればいいというものではなく、個人の能力が評価されるので、履修する科目数もミニマム、日本の中等教育課程の勉強とは異なる。
二年生に進級できなかった留学生は留年すると奨学金も停止され、退学後、他大学での単位互換は不可能となった。
個別に教員を訪ねても相手にされず、大学側は「ルールだから。説明したから」の一点張り。講義は自ら学ぶ方法でなく、劇場型の旧来のやり方。

オックスフォードやハーバード大入学を辞退して日本の最高峰の東大に期待をもってやってきた優秀なPEAK生たちは、日本の現状をどう見ているのだろう。

 

PEAKに特化した東京大学のHPがある。 ⇒ http://peak.c.u-tokyo.ac.jp/index.html

 

素人所見で恐縮だが、動画で紹介されている教授の英語レベルを見て、世界の大学と比較する留学生候補がどう感じるかを、天下の東京大学は考えないのだろうか?

そこからLINKされているPEAKのFacebookページを拝見すると、小学生のような天真爛漫な交流の姿を微笑ましく感じる一方で、欧米から留学しているであろう外国人学生の大人びた表情をみると、大学生というイメージも、日本と海外との差を感じる。

ハーバード大学のFacebookページと比較すると、大人と子ども、あるいは、学生の品格の差が見える。

これは、個々の学生の問題というよりも、やはり世界の中で自分達がどのように見えるかというブランディングの意識を常に念頭に置いて、考えているからだと読み取れなくもない。

 

「大学受験・進学60年史プロフィール」サイトにある「第5回 「東大入学辞退 381人」の異変 8月号」には、昭和62年度の受験機会複数化入試導入による国公立大学の地位低下について書かれており、東京大学・京都大学が今抱える問題の元凶の一点を考えるきっかけにもなりそうだ。
東大入試に見る合格者数と入学辞退者の推移

 

さて、今回のニュースは、PEAKそのものについての知識もなく、実際の数字(合格者・入学者数)についての記載もないまま、「東大合格者7割 入学辞退」のタイトルで大騒ぎしているようだ。
「年々、入学辞退者が増えている」という言い回しも、平成22年から始まった秋季入学のPEAKの浅い歴史で使われるべき言葉なのか、「東大合格者7割」が、全合格者数ではなく、およそ、その1%に満たない数字を母数にしていることを、知った上で、現在の東京大学のグローバルキャンパス構想の問題点を、日本の最高学府の課題として捉えるべきではないかと思う。

 

未来のグローバル社会の中、日本語が世界に通じる公用語と成り得る可能性は、PEAK生の東大における百分率にも劣る数値であろう。
国内の学閥で、ビジネスも回る時代は終わった。
海外に知己を得、その存在の協力なしに、日本経済の復興はないだろう。

 

そのためにも、世界ではまだ地位の低い東京大学は、それでも日本の最高学府として、PEAK生の存在価値とコンセプトを真剣に議論し、すぐさま行動に移していく必要がある。

東京大学の価値を低めることは、未来の日本の価値を下げてしまうことであると、マスコミも一時の売上げに飛びつくことをせず、大きな視野をもち、独自の視点、調査で、情報を発信すべきではないかと、この場で、メディアの一つとして、苦言を呈したい。

 

(PHOTO:CLUB MANAGEMANT-著作権は放棄していません。画像・文章の転載には、ご一報いただけますようお願い申し上げます。無断転載禁止)

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One Response to 日本最高峰東京大学の世界ポジション

  1. itoatsushi より:

    東大が滑り止め、それに驚く(騒ぐ)人たちって、「どんな人?」と思います。制度の問題があるにせよ、以前から教育の国際化において、東大は出遅れている(閉鎖的だった)し、国際化に通用する教員も育っていない、と思う。いつからか、国際的な大学ランキングを目にするようになり「東大は何位?」なんていわれるようになった。学の無い僕は「何位でもいいじゃん」と思うが、やはり、日本の未来のためにも(自分も含め)国際化は避けて通れない。危機意識が高まっているようなので、東大の国際化は、「コレカラダ!」と思う。

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