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ビジネスプロデューサーは禅でビジネスを成長させる

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禅 の力をビジネスに生かす

 

ビジネスプロデューサーには、なぜ禅が必要なのか

 

上記タイトルのテーマで、2014年8月29日、東京大学キャンパス内にある伊藤国際学術研究センター(株式会社セブン&アイ・ホールディングス名誉会長の伊藤雅俊氏と夫人伸子氏による寄附により、社会と東京大学との関わりを深めるための社会連携及び国際交流拠点として設立された最先端のカンファレンス設備が整った施設)にて、一般社団法人日本ビジネスプロデューサー協会による、ビジネスプロデューサーたちと、その養成のための学びの勉強会及び交流会として、毎月開催している「BPA LIVE」の第30回目が開催された。

会場には、日本ビジネスプロデューサー協会会員と、禅とビジネスプロデューサーとの関わりに興味をもつ経営者や起業家、投資家たちが集まり、ビジネスマンに座禅によるビジネス向上効果を提案している、青森県観音寺住職の前田憲良師から、現代家屋でも可能な椅子座禅の方法を学んだ。

参加者からは、禅の爽快感・集中力・心の落ち着きなどを体感出来たという感想が上がった。

また、日本ビジネスプロデューサー協会理事長の伊藤淳ビジネスプロデューサーからは、過去の自分の喪失体験を救ったのは、当時、倒産に追い込まれたきっかけにもなった、日比谷・東京宝塚ビルの地下1階に作った、座禅堂を含めた100坪の施設「suUhaa TOKYO(スーハー東京)」の「自然界の呼吸音を「スーハー」と表し「呼吸=己究(己を究めること)」・「禅」を中核に据え「心と体のバランスのとれた状態をつくりだす」という、自らが作り出したコンセプトであったと語った。

 

近年、世界中で、禅が注目されている。アップルのスティーブジョブズが、日本・・・特に禅に傾倒していたことは有名だ。

実は、禅や瞑想を取り入れている企業は、海外にも多く、GoogleやFacebookをはじめ、ニッチなアイデアから億単位のユーザーが熱狂するサービスを生み出すようなベンチャー企業も、禅をトレーニングに取り入れている。
彼らにとって禅・瞑想は、侘び寂といった平家物語のような諸行無常といった、ものごとの理(ことわり)を感じるためではなく、クールに、あくまで自己を磨き生産性を高めるためのツールとして取り入れている。
彼らは、禅・瞑想が自らへの投資であり、それによる見返りを期待している。
禅や瞑想をすることは脳を鍛えることで、内からの化学反応を起こすために行っているのだ。

 

感情は本能との闘い?

 

ダーウィンの進化論を紐解くと、人間はサルと同じ祖先をもつといわれている。いってみれば、ヒトはサルの神経過敏化の結果ともいえる。

野生動物は、敵をはじめ、目の前に向かわねばならないものに出会った時、戦うか逃げるかを瞬時に判断する生き物であり、その本能的直感力が、ビジネスでも、成功を左右することは往々にしてある。

しかし、一方で、本能の中の感情(好き嫌い)に忠実になった場合に、本能として表れる感情の過敏反応が増え、それが人間関係の妨げになり、感情的な口論に発展してしまうことも多々出てくる。

特に、女性の社会進出が増え、さらに情報過多となった現代のビジネス環境においては、人間の感情が交叉し、人間関係のストレスが多様化し、うつの症状をもつ人間の増加も、そこに原因があるように思える。

 

理性を失わせる科学的分析

 

なぜ、そうしたことが起こるのだろうか。

科学的にいえば、脳の扁桃体(大脳辺縁系の海馬の先にある小さな部位で、喜怒哀楽といった感情の処理と記憶に重要な役割を持つほかに、恐怖、不安、興奮、闘争行動、逃避行動、性的行動に大きく影響する)から発せられる恐怖感が、理性を失わせる。

身の危険を感じるとドキドキしたり、冷や汗が出たりするのは、扁桃体が恐怖に反応し、アドレナリンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌を促しているためで、このアドレナリンやノルアドレナリンは、人間を人間の祖先、サルの本能に還してしまうのだ。

 

スタンフォードの自分を変える教室

 

2013年にベストセラーになった『スタンフォードの自分を変える教室』は、「意志力」について考え方を根本的に変え、受講者の行動を次々に変えさせたスタンフォード大学の超人気講義を紹介した本で、その本の中に、意志力、自己コントロール力を強化する方法として、瞑想に触れている。

「神経科学者の意見によれば、瞑想を行うようになると、脳が瞑想に慣れるだけでなく、注意力、集中力、ストレス管理、衝動の抑制、自己認識といった自己コントロールのさまざまなスキルが向上します。瞑想を定期的に行えば、たんに瞑想がうまくなるだけではありません。やがて、脳はすぐれた意志力のマシーンのように発達します。定期的に瞑想を行う人の場合、前頭葉皮質や自己認識のために役立つ領域の灰白質が増加するのです。」

とあり、

「自己コントロールとは、そのような自分自身のさまざまな一面を理解できるようになることであり、まったくちがう人間に生まれ変わることではありません。自己コントロールの探求においては、私たちが自分に向かってふりかざすおきまりの武器ー罪悪感、ストレス、恥の意識ーは何の役にも立ちません。しっかりと自分をコントロールできる人は、自分と戦ったりはしません。自分のなかでせめぎ合うさまざまな自己の存在を受け入れ、うまく折り合いをつけているのです。」

と、自分をじっくりとみつめること(受け入れること)の重要性を説いている。

 

ボストン大学やハーバード大学の実験

 

禅や瞑想を行うと、脳にかかるストレスへの反応回路が組み替えられるとする研究結果がある。ボストン大学では、3時間半の瞑想トレーニングで、感情が傷つけられるイメージに対して被験者が反応しにくくなることが証明された。

ノースイースタン大学とハーバード大学の研究では、8週間に及ぶメディテーション(瞑想)トレーニングを行った。そして、彼らがある待合室に座っている間に、松葉づえをついた人(本当は役者)に対して、援助をするかどうかのテストを行ったところ、トレーニングに参加しなかった人ではわずか15%が助けを申し出た一方で、トレーニングを行った人では50%が松葉づえの人を助けるという結果になった。

「この結果の本当に驚く事実は、社会的規範にかかわらず、メディテーションが人を高潔に変えることです」とノースイースタン大学の心理学者は語っている。

 

欧米が注目する禅や瞑想

 

近年、とくに欧米の医療機関では瞑想技術が応用された「マインドフルネス」(念、スムリティ、サティ)と称される方法が盛んだ。
ハーバード大学並びにハーバードメディカルスクール(医科大学院)を卒業し、アメリカのヴィッパサナー瞑想の拠点IMS(Insight Meditation Society)の創立者ジャック・コーンフィールドと、ジョセフ・ゴールドシュタインに師事したマーク・エプスタイン(Mark Epstein,M.D.)は、ニューヨークで瞑想とサイコセラピーを行っている(『ブッダのサイコセラピー』春秋社 2009年)。

社会心理学の博士号を持つ、ラリー・ローゼンバーグ(Larry Rosenberg)は、ハーバード大学、シカゴ大学、ブランダイズ大学で十年ほど教鞭を執りながら、瞑想歴は三十年に及び、クリシュナムルティ、ヴェーダンタ、禅などを経て、ヴィパサナー瞑想にいたる。ケンブリッジ・インサイト・メディテーション・センターの創設者であり、インサイト・メディテーション・ソサイエティの創設期からの中心的指導者であり、近年はヨーガ・センターでもヴィパサナー瞑想を教えている(『呼吸による癒し』実践ヴィパサナー瞑想、春秋社 2001年)。

マサチューセッツ工科大学で分子生物学博士号を取得した、ジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)は、1975年にマサチューセッツ大学医学部の中にマインドフルネス・センター(マインドフルネスにもとづくストレス低減法プログラムを実施)を開設。彼はヴィパサナー瞑想や禅を学び、ブッダは人間の悩み解決に取り組んだ人であり、その解決法を示しているのが仏教思想や修行法であると、現代的にプログラム化して問題解決に役立てるために、マインドフルネスストレス低減法を打ち出した(『マインドフルネスストレス低減法』北大路書房 2007年)。

認知療法の分野で著名な、ティーズデール(J.D.Teasdale)等が、このストレス低減法プログラムを取り入れて、うつ病の再発予防に効果があることを検証した(同上書籍)。

デイヴィッド・エマーソン(David Emerson)は、マサチューセッツ州のボストントラウマ・センターのヨーガ部門長、公認ヨーガ教師として、2003年からセンター創設者であり、精神科医、ボストン大学医学部教授、国際トラウマティック・ストレス学会会長を歴任した、ビッセル・ヴァン・デア・コーク博士(Bessel van der Kolk, M.D.)とともに、「トラウマ・ゼンシティブ・ヨーガ」を開発し、心理療法として応用している(『トラウマをヨーガで克服する』紀伊国屋書店 2011年)。

マサチューセッツ総合病院のサラ・ラザー(Sara Lazar,M.D.)は、精神科医、心身医学の専門家として訓練を受けているが、学生時代に交通事故に遭ったことを機会にヴィパサナー瞑想、ハタ・ヨーガを実践するようになった(永沢 哲『瞑想する脳科学』講談社選書メチエ 2011年)。

 

ビジネスプロデューサーにとって禅はAI(人工知能)に匹敵するのかもしれない

 

瞑想は「ワーキングメモリ」(人工知能研究にも応用されている認知心理学の概念)と目的を成し遂げるための能力「実行機能」を向上させるとする研究もある。

瞑想を長期間続けた人は、次々と変化していく刺激に対応する能力が高いということもわいわれ、Googleが引用している研究によると、瞑想を習慣化している人は風邪もひきにくく、心身に変化の影響が及ぼされるという。

IT企業に欠かせないエンジニア集団には、感情の知への理解を求めることが困難で、ビジネスコミュニケーションの改善のために、禅や瞑想によって、互いの行動動機を理解し合うことが可能になるという効果があるという。

なぜ、それを行っているのか、という相手の行動動機を理解することによって、自分がすべきこと、全体の中で、誰が何の役割を担い、そのために、各人がどう動いて行けばいいのかを、まるで将棋の盤の上で動く駒を見るかのように、プロジェクトの進み方が見えてくるのである。

ビジネスプロデューサーとして、日々の鍛練のひとつに、禅を取り入れていくことは、そうした自分自身の感情の知への理解から、他者やプロジェクトそのものへの「ワーキングメモリ」への冷静な判断が可能になるのだと、協会の理事長であるビジネスプロデューサー伊藤淳氏は、インタビューで、自らの体験を元に語った。

禅とは「己事究明」であり、すなわち、ビジネスプロデューサーに必要な「己究学」の体得につながる。

ビジネスプロデューサーの養成機関であるBPA SCHOOLのコンセプトは「己究学」であるという。

ビジネスプロデューサーは、禅を取り入れた「己究学」で、日本だけでなく、世界中のビジネスプロデューサーと、言葉を超えた禅の力で、脳を鍛え、内からの化学反応を起こすに加え、世界共有の感情の知のシステム化を可能にするかもしれない。

世界が結び合えるプロジェクトに向かい、東西南北のビジネスプロデューサーが、協働する日は、間近に迫っているように感じられる。

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