空を飛びたい!信じる力が人間の憧れを現実にする
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という映画をご存じだろうか?
そこに出てくるタイムマシンの乗用車デロリアンを思い起こすような、空飛ぶ自動車が現実化している。
初の実用的な空飛ぶ自動車「Transition」の製造販売を手がけている航空機ベンチャーTerrafugia社は、マサチューセッツ工科大学とスローン経営大学院の卒業生のDepartment of Aeronautics and Astronautics(航空宇宙工学部門)卒業生が作った会社である。
100K Entrepreneurship Competitionという全米最大のビジネスプランコンテストで2006年に次点となった。
そのTerrafugia社が、新しい空飛ぶ自動車のコンセプト「TF-X」を発表。
第一世代のTransitionは離着陸するために滑走路が必要だったが、TF-Xは装備された電気モーターによるローターの浮力を使うことにより、自宅のガレージから直接、垂直離着陸が可能になる(ただし、自宅のガレージから飛び立つためには、FAAのnon-tower controlled airspaceとしての許認可が必要)。
操縦は高度に自動化され、一般ドライバーなら5時間程で操作方法を習得でき、毎時322キロの巡航速度で自動飛行が可能だという。
不測の事態にパラシュートやエアバックも搭載し、2025年頃の一般発売を目標としている。
Transitionは予約販売中で、2015年に20万ドル(約2019万円)で発売の予定。
TF-Xの開発には8~12年の期間かかると予想され、TF-X購入の際には、Transition所有者を優先するという。
初期研究では最終価格がハイエンドの高級車と同等の値段になると考えられていたが、需要が増え自動車産業へより投資できるようになったため、新しい素材や製造工程を開発により原価が下がるのではないかといわれている。
Terrafugia社は全米高速道路交通安全委員会(NHTSA)に対して、この型破りな空飛ぶ自動車が道路も走れるように適用除外を求め、すべて承認された。
これにより、例を挙げると、Transitionに適したタイヤの装着や、ガラスより軽いポリカーボネート製の窓の採用などが可能になった。
2010年には米連邦航空局(FAA)が、Terrafugia社に対して、軽量スポーツ航空機(LSA)の最大離陸重量である1,320ポンド(約600kg)を110ポンド(約50kg)超過することを許可している。
これにより同社は、Transitionにエアバッグなど車両用の安全装置を搭載しながら、航続距離と最大積載量で、ほかのLSAに対抗することができるようになった。
夢や憧れを現実にするためには、そのコンセプトを信じ続けることのできる仲間が集まり、目の前の問題(法的な部分も含め)に対し、不可能と思えることを可能にしていくためのコツコツとした解決を図っていくことで、一歩ずつ進化していく。
予約金を払う者たちは、手に入れるモノだけでなく、その先のさらに進化したものの存在を信じ、投資的意味も含めた仲間なのだ。
その信じる者たちに応えるために、技術開発、素材研究、製造工程の最適化、国という法律との戦いを行う。
大きな信じる力が、人間の夢や憧れを現実にするのである。
目の前の問題を明確にし、共に解決に向かう仲間を裏切らないという信頼が、未来を創っていくのであろう。