インターネットの遺言サービス「ラストメッセージ」終了
2014年3月4日に、プレスリリースされ、2015年3月4日、1年で終末を迎えた「ラストメッセージ」は、ユーザーの死亡が確認されると、運営側がユーザーから預かっていたPCやスマホのデータ、メールやFacebookやTwitterなどのログイン情報を、事前登録しておいた遺族や友人などに通知し、データを消去してもらう現代のIT社会ならではこそのサービスだった。
Facebookに遺言を書きこむ依頼もでき、ネットを通じた訃報と遺品処理サービスの提供を行い、スタート当初から、広く注目を集めていた。
死後とはいえ、誰かに自分のデータをすべて委ねられるだろうか。あれこれ顔を思い浮かべた。結局、バディは空欄のまま。関心が薄らいでいった。
今年1月に、「ラストメッセージ」を利用しようとした50代男性は、自分の死後、消してほしいメールやSNSなどのIDやパスワードを受け取り、自分に代わって消去してくれる「バディ」と呼ばれる欄を前に、誰の名前も思い浮かばなかった。
この記事が話題になったように「友人、家族、後輩。誰でも構わない」バディとして、自分の死後の処理を委ねられる存在がいないという人は、非常に多いのであろう。
国民の世帯のほぼ9割以上にネット接続機器が普及
総務省「平成25年版 情報通信白書のポイント」によると、「携帯電話・PHS1」及び「パソコン」の世帯普及率は、それぞれ94.5%、75.8%となっている。
また、「携帯電話・PHS」の内数である「スマートフォン2」は、49.5%(前年比20.2ポイント増)と急速に普及が進んでいる。
日常の家電と同様に生活に入り込んできたIT機器の利用については、その使用法は分かっていても、内容についての100%正しいルールはなく、第三者が法的に規制をかけることは大変に難しい。
多くの凶悪事件が起こった際に、ネット上に散らばっている容疑者の写真や文章、日常の生活が集められ、警察発表よりも赤裸々に明かされることになっている現実の中、このサービスは、決して、不必要なサービスではなかったはずだ。
「ラストメッセージ」が遺した課題
USTREAMは、2014年10月16日に、11月1日以降、作成から30日が経過したアーカイブ映像(過去の番組)を削除した。有料のサービス利用者は、一定の処理をするとアーカイブを残せるようになっている。
無料サービスを利用していた筆者は、それに気づかず、残しておきたかった配信映像が消えてしまって、がっかりしたのだが、結局は、それまでであったと諦念した。
SNS利用は、大規模なSNSサイトほど無料のものがほとんどであるが、一定期間を過ぎた過去ログは自動消去するシステムを取り入れ、有料会員のみが、すべての記録保持が可能等のサービスに切り替えることで、いつか消したい過去を消すタイミングは解決するだろう。
近しいほど感情が先行するという課題
PC・スマホ等(残ったSNSデータ・ログも含め)については、「ラストメッセージ」のシステムのように、アクセス権をフォルダで保存し、それを、身辺にいる身近な誰かではなく、第三者で利害関係のない公正な資格者(弁護士や行政書士といった報酬費用が高額な資格保持者でなく)に、作業としてのデータ削除を行わせることで、「バディ」の選択を他者に委ねることができる。
身辺処理というのは、身近な人間よりも、無関係の冷静に処理のみ行ってもらえる存在の方が、感情面で楽な部分も多い。
有料化することで、受託側は不正やデータ流出をしないという責任を負い、依頼側は、身近な人間に、恥を見せずに処理をしてもらえるというシナジーが生まれる。
ゴミ捨てでなく財産を処理する意識と知識の学習課題
本来、自分の死後は家族や親せきが身辺の処理をするのが当然であった。しかし、高齢者人口が増え、高齢者がさらに高齢の親の遺品整理をするという時代には、遺品処理の負担は大きい。
経済産業省の調査に依れば、70歳以上の方の約50%以上が遺品整理業者を必要とし、業者も急増し、2014年3月時点では全国に約5千社あると言われている。
一方、遺品整理業者とのトラブルも増えており、不正な価格での買い取りや、不当な請求なども増えており、遺品整理士認定協会で資格講座を開設・指導している。
マネタイズするシステム作りの課題
インターネット上の知的財産管理として、適格者を育成し、それら公正な第三者に、IDやパスワードの不正利用の罰則の厳しさ等を学ばせ、内容すべてを破棄する際のプライス、内容によって、遺す遺さないまでを判断する能力をもった高度な資格者を利用する処理方法のプライス等、サービスへの適正価格を決められなかったことが、「ラストメッセージ」の敗因といえよう。
友達同士で話のつくやりとりを事業としてマネタイズするためには、利用をためらう人の意見を、解決課題として真摯に向き合い、事業とよべるまでに成長し続けていかねばならない。
失敗は諦めた時に失敗となる。
ユーザーから届けられた声に、謙虚に真正面から向き合った時こそ、ビジネスのチャンスがあると、ビジネスプロデューサーは知っている。
(PHOTO : CLUB MANAGEMENT)