自殺兆候のある社員は解雇 フォックスコン・インターナショナル社
フォックスコン・インターナショナル社(富士康国際)は米アップル社最大のサプライヤーで、台湾に本社を構え、主に中国を生産拠点としている電子機器受託生産(EMS)の世界的企業グループである。
アップルからの委託で携帯端末であるiPhoneやiPadなどの生産を行ってきた。
2010年に従業員の自殺が相次ぎ、フォックスコンの非人道的な労働条件が問題となった。
未発売のコンシューマー向け製品情報が流出しないよう厳重なセキュリティー体制を敷いており、それによる肉体的・精神的ストレスが問題となっている。
アップルの指示を受けて、賃金や労働時間、残業時間の短縮、安全手順の改善、新規従業員の雇用、寮の刷新といった福利厚生など労働条件を改善してきたフォックスコンだが、Webメディアのクォーツ(Quartz)によると、同社は自殺願望のある従業員を解雇することで、社員の自殺を防止しているという。
中国紙サザンメトロポリスデイリーの報道によると、27歳の元フォックスコン従業員、張(Zhang)さんは不眠症と診断されて薬を服用していたが、同僚にそのことを知られた後に解雇された。
4月2日、大量の薬を服用し病院に搬送された張さんは自殺を図ったとされた。そして翌日に解雇された。
張さんは不眠症の薬について医師の処方に従わなかったと認めたものの、薬効があがらなかったため多めに摂取しただけだと主張した。
フォックスコンは解雇の理由は明らかにしていない。通達によると、解雇の理由は「張さんが通常業務を中断して会社の秩序を乱したため」となっていた。
米非営利団体の公正労働協会(FLA)が昨年8月、フォックスコンを調査し、従業員の労働環境について、iPhoneとiPadの大半を生産する中国の工場の労働環境・安全基準は改善されたものの、まだ困難な問題があるとする報告書をまとめたと、クォーツが伝えている。
これとは別に、非営利団体の中国労働監視団(CLW)は昨年9月にフォックスコン従業員が1日あたり6,500台のiPhone組み立てを要求され、休憩を取ることも禁止されていると報告した。また同団体はフォックスコンが14歳の学生をインターンとして採用したと述べている。
昨年11月には経済政策研究所が同社の台湾工場を視察し、FLAが「従業員は酷使されていない」としたのは寛大すぎると主張した。
フォックスコンは工場での就業状態が低賃金で長時間労働で悪条件であるというイメージを一掃しようと、中国の国営メディアやソーシャルメディアに発信し続けている。
先週、女性従業員が製造工場の屋上から飛び降りたというウェイボー(中国版ツイッター「微博」)に掲載されたレポートを、フォックスコンは否定した。
同社はウェイボーのレポートについて、雇用問題に不満を持つ女性従業員がフォックスコンの深セン工場の屋根から金曜日の朝飛び降りたが、生存していると述べた。また、それ以外に3人の従業員が飛び降りると脅かして屋上に上がるという騒動もあったと報告した。
同社はCNETの取材に対して「3月29日、中国・河北省の隆化と広東省の深センの3人の従業員が、生産シフトの一環として他のフォックスコン中国工場へ異動することに不服を申し立てていた。争議の末に従業員は工場屋上に集まり、地元の法執行当局が現場に到着するまで、そこに留まった」と説明した。
「事態は平和的に解決された。負傷者は出ていない。これ以外の報告はすべて誤りである」とフォックスコンは主張した。
2010年以降、深センと四川省・成都工場で少なくとも14人のフォックスコン従業員が自殺とみられる死亡をしている。この状況に応じて、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は従業員のために「自殺対策の専門家」を派遣して現場で健康管理にあたらせた。また、従業員を思いとどまらせるために工場施設に「自殺防止ネット」を設置する対策を講じた。