Kickstarter(米)とMakuake(日)クラウドファンディングでラピロ (Rapiro)目標金額に達成
クラウド・ファンディングは、製品や商品、作品を作るために、制作資金を調達できないイノベーターやクリエーターが、インターネットでアイデアを公開、アピールすることで資金を集める目的で、世界に広がっていった。
「Kickstarter」は、世界でもメジャーなクラウドファンディングだ。
一方、日本国内でもCAMPFIRE、READYFOR?、Makuakeなど多くのクラウドファンディングサイトが立ち上がっている。
世界中で注目されているKickstarterでは、非常に多くのプロジェクトが掲載されているが、期間内に目標金額を達成するプロジェクトは、そう多くはない。
そうした中、日本で開発されたハードウェアとして、初めて目標額を達成したのが、人型ロボットキット「RAPIRO」だ。
開発者は、機楽株式会社の代表取締役石渡昌太氏。
石渡氏の開発した人型ロボットキットRAPIROは、Kickstarterでのクラウドファンディング開始後、わずか2日で当初の目標金額の2万ポンドをクリアし、最終的には目標額の4倍近くとなる約7万5000ポンドもの資金獲得に成功した。日本発のハードウェアとしては初となる快挙である。
さらに、Kickstarterで世界中に認められたRAPIROを、日本のクラウドファンディングサイト「Makuake」で挑戦。
こちらも、目標金額の300万円を大きく超え、566万円を集めることに成功した。
日米二つのクラウドファンディングによって集めた資金は2000万円近くにもなった。
RAPIROは、クラウドファンディングでの出資者への出荷を完了後、さらに次のフェーズへと進み、2014年2月末から、スイッチサイエンスやAmazon、秋葉原のロボットショップやパーツショップなどでの一般販売をスタートし、好評な売れ行きだという。
国内のクラウドファンディングは、金額を見ても、小さな資金集めの場でしかないし、ワクワクするようなプロジェクトは見当たらない。
むしろ、世界でのクラウドファンディング資金集めに成功した後に、それを実績として、国内クラウドファンディングに載せ、さらなる資金を集めるという手法は、確実な資金集めにつながっていくのではないだろうか。
APIROは、石渡氏が中心となって開発したプロダクトであるが、機楽1社だけで、開発や製造を行なっているわけではなく、製品化に向け、3Dプリントを担当した株式会社JMC、金型製作や射出成形を担当した株式会社ミヨシ、基板の設計と製造を担当した株式会社スイッチサイエンスの4社がチームを組んで行っている。
石渡氏は、ほぼ一人でハードウェアもソフトウェアも担当し、試作品を作っている。だからこそ、すべてに対して、時間を最短に押さえ、さらに、専門分野の者たちとプロジェクトを組むことで、開発ペースが速まり、また、他のアイデアと結びつき、専門分野に任せることで質の高い作品(製品)を生み出すことも可能だ。
このRAPIROは、デザインや色にもこだわり、かわいらしい外観のために、外装樹脂はABSの射出成形のための金型は、アルミ金型を使っている。金型製作と射出成形担当の株式会社ミヨシでは、少量生産のための安価なシリコン型、樹脂型ではなく、鉄の一歩手前の強度を持つアルミ合金で作った。表面の品質なども普通の金型と遜色ない。鉄の型に比べると柔らかいので、何百万回は厳しいが、数万回はいけるようにと考えた。外観のABS樹脂ペレットの色にもこだわっており、クリーム色寄りの白ではなく、ハッキリした白の発色を求めて試行が繰り返された。
RAPIROの目は、フルカラーLEDを用い、いろいろな色に変化する。
ロボットキットの組み立て所要時間は、およそ3~4時間。アルバイトの工学部の学生だと1~2時間で組み立てられるという。
石渡氏は、RAPIROは、たまたま、今、Raspberry PIや3Dプリンターの登場といった流れがあって生まれたという。
クラウドファンディングも、現代に出て来た仕組みで、今まさに、あるものを組み合わせて、人、モノ、金を組み合わせて成功させた事例といえよう。
ビジネスプロデューサーにとっての、必須の素養といえる。
石渡氏は、クラウドファンディングを通じて、達成分を作って終わり!というプロジェクトが多い中で、市販に持ち込んだという手腕がある。
石渡氏は言う。「達成した分だけのほうが断然楽ですよ。継続することはやはり責任もありますし、すごく大変です。」
クラウドファンディングは、もともと、少額のお金を大多数の人間が、ひとつの目的のために寄付するところから始まった。
1884年、アメリカの『自由の女神像製作委員会』が、フランスから贈られた自由の女神像を載せる台座建設の資金を使い果たしてしまう、という珍事に、ジャーナリストで実業家のジョセフ・ピュリッツァーが、自分の経営する新聞『ニューヨーク・ワールド』で、一般市民に台座の建設費用を寄付するように呼びかけた。
このプロジェクトにはおよそ6ヶ月で10万ドルもの寄付が集まった。金額もさることながら、百万人以上が1ドル以下の小額を寄付することで実現したことで、ひとりひとりの力は小さくても、たくさんの力が集まることで、国家事業さえ実現できるという事例を作ったのだ。
Kickstarterは、「人々による」ファンディングであり、ベンチャー・キャピタルや銀行に頼らなくていい資金集めの新たな方法となっている。
プロジェクトの実績が増えるにつれて、様々な問題点も出て来た。
一部のクリエーターが、出資の報酬としての完成品を何100個単位で設定し、出資した人が、それを転売するのを見込んで、一気に多額の資金を集めはじめた。
元来のクラウドファンディングの「ひとりひとりの力は小さくても、たくさんの力が集まることで大きなことが実現できる」という目的がボヤけてしまい、サイトがまるで卸売市場のようになった。
さらに、プロジェクトの少額出資者という意識をもたず、ショッピングサイトと同様、ただ面白いものを買おうとする消費者が増えたことだ。
プロジェクトの中には、構想段階でしかないアイデアが多数存在する。それを製品の販売と勘違いして、リスクを知らずにお金を出したり、プロジェクトをサポートするという意識も当然のことながらない。プロジェクトが遅れたりキャンセルされたりした場合に大きなトラブルの元になってきた。
クラウドファンディングに限らず、プロジェクトは、一定期間中に目標額の満額が集まらなければキャンセルされるし、場合によってはプロジェクト開始後に、問題に直面して中断することもある。
Kickstarterでは、前者のケースでは、満額になるまで課金されないので、リスクはないが、後者の場合は、出資した金が戻ってこないということになる。
目標資金の100%を受けてプロジェクトが成立したものでも、過半数が完遂しないという。また、約束した期日よりも完成が遅れることも多い。
Kickstarterは、ここは店ではないことを明記し、その後、様々にルールを厳しくした。
詐欺事件もよくある。プロ級のデモ・ビデオを作成したプロジェクトの構想だけで資金集めをして、去っていくというものだ。
絵に描いたもちに騙されるというものだ。
ハードウエアのプロジェクトでは、悪意はなくても、アイデアを練り、絵を描き、プロトタイプを作ったまではいいが、材料や部品の調達、製造はどこでするか等々、経験がないためにコスト計算を過ち、当初、思った以上に金がかかるとわかり、プロジェクトが取り止めとなることもある。結局、資金を出した人々には金は戻ってこない。
素人のお遊びに手を出して、火傷するというものだ。
出展側の大きなリスクとして、アイデア-IP(知的財産)をみ公開したことで、真似をされ、他人に横取りされるということもある。
クラウドファンディングによって、資金が集まれば、その製品やプロジェクトは実現するかもしれない。
ただし、それが必ずしもいい起業ともいえない。
プロジェクトは、1回限りのできごとだが、会社とは永く続く存在であらねばならないし、それを目標とする。
ひとつのプロジェクトが終わっても、その後に続く別のプロジェクトを支えていくだけの人的な環境の良し悪しは、クラウドファンディングというだけでは見分けがつかない。
クリエーターは、これで会社が作れると一時は喜んでも、後で苦しみを抱えることにもなる。
ビジネスプロデューサーは、その苦しみを抱えることなく、次々に、新たなプロジェクトを生み出し、持続継続させていく影の功労者なのである。
前述の石渡氏の「達成した分だけのほうが断然楽ですよ。継続することはやはり責任もありますし、すごく大変です。」という言葉に、ビジネスプロデューサーとして、実感をもって頷けるのではないだろうか。
コメントは締め切りました。