中学国語教科書「逃げることは、ほんとにひきょうか」作者なだいなだ氏死去
精神科医の体験に裏打ちされたユニークな文筆活動で知られた作家、なだいなだ(本名・堀内秀=ほりうち・しげる)さんが亡くなっていたことが8日分かった。
享年83歳。
慶応大医学部卒。フランス留学後、同大病院などに勤務。その一方、同人雑誌「文芸首都」に加わり、「海」などで6度、芥川賞候補になった。スペイン語で「無と無」を意味する「なだいなだ」のペンネームで小説、エッセー、批評などを発表。鋭い文明考察とユーモアあふれる文章で、幅広い執筆活動を続けた。作家で精神科医の北杜夫さんとの親交も深く、医師としては、日本のアルコール依存症研究の先駆者だった。
なだいなだというペンネームは、スペイン語の「nada y nada」から。意味は「なにもない、なにもない」
1969年、「娘の学校」で婦人公論読者賞。70年、「お医者さん」で毎日出版文化賞。フランス人の妻との間に生まれた娘たちに人生を語りかけた「パパのおくりもの」や「人間、この非人間的なもの」「権威と権力」「老人党宣言」など多数の著書がある。
晩年は神奈川県鎌倉市で執筆活動に専念する一方、2003年にインターネット上の仮想政党「老人党」を立ち上げ、ホームページで弱者が暮らしやすい社会づくりや平和を訴えた。本人のブログによるとがんで闘病中で、5月末には「がんとの付き合いで、なんとか頑張っていますが、白状すると、ちょっときつい」と記していた。