農業クラウドファンディング iCrowdFarms(イギリス)の挑戦
クラウドファンディングの歴史は浅いが、アメリカが先導して、世界各地でクラウドファンディングというシステムを使った資金調達は増え続けている。
主として、プロジェクトのコンセプトや理念に賛同、共感して集まる寄付型、プロジェクト達成後の約束された見返りを期待しての購入型、プロジェクトの成功によって大きなリターンを期待し、反面、リスクも負う投資型の3つの方法を組み合わせたり、一つに特化したり、サイトのコンセプトを打ち出したものなどがある。
2012年4月5日、アメリカで、JOBS Actがオバマ大統領によって調印され、クラウドファンディングに関して金融規制緩和がなされ、日本でも、、6月5日、金融庁の金融審議会総会で、来年の通常国会に金融商品取引法の改正案を提出する方針を打ち出した。
クラウドファンディングは、未来の金融インフラとして世界視野での可能性を秘めている。
イギリスで、農業クラウドファンディングに特化した「みんなで作る世界一の農業ポートフォリオ」というコンセプトのiCrowdFarmsが開設された。
まだ、試用稼働といった様相であるが、ネット上に天文学的数字のサイトが立ち並ぶ中で、今後、産業の絞り込みはもちろん、さらにターゲット、コンセプトが明確な専門分野的なクラウドファンディングという需要も増えていくのではないかと思う。
このサイト運営者の、Nick Havercroftは、イギリスで生まれ、アフリカで農場を持つ大規模な農業会社を立ち上げた。2008年のリーマンショック以降、資金調達の困難さにタバコ事業をあきらめ、環境事業へと参入した。
そうした中で、農業に特化したプロジェクトで起業をしたいと考える人たちに、立ち上げ資金を調達するために、自分の経験をもとに、支援、助言していきたいという思いから、iCrowdInvestmentsと共に開設をしたという。
イギリスではスタートアップ(起業家)向けのクラウドファンディングが人気で、1993年にEnterprise Investment Scheme(EIS:企業投資スキーム)という制度があることも大きい。
年間£100万(約1億3千万円)を上限に投資家は30%の税控除を受けられる。ただし、投資したお金は3年間は動かせないのだが、キャピタルゲインに対する税控除があるおかげで、投資しやすくお金が集まりやすくなるのだろう。
イギリスで有名なクラウドファンディングに、株式投資型クラウドファンディングCrowdcubeがある。
誰もが簡単にアカウントを取ることができ、簡単に株式に投資ができる仕組み。
ビデオや事業説明資料を掲載し、いわばネット上プレゼンテーションのようなものである。
起業家の平均年齢は40歳。ビジネスの経験をもつ人が、自分の力を発揮するために挑戦するという人が多いようである。
リターンは、出資額によって異なり、日本円換算で、1,300円から1億3,000万円と幅広い層が参加できる。
リターンの内容も、割引券から会員権、株式保有までとこちらも幅が広い。
一プロジェクトあたりの平均投資家数は63名。中には400名を越えるものも。投資資金の平均は2,000万円。投資家に提供された株式の比率の平均は16%。達成したプロジェクトの資金集めの日数は、平均51日。投資金額が達成するビジネスは、短期間で希望金額の資金が集まっているという事実は、今後、日本のクラウドファンディングの参考となるのではないだろうか。
日本でも、銀行の借入準備やベンチャーキャピタルとの交渉等にかかる時間を考えた時、企画書、プレゼンのためのビデオ撮り等、前向きになれるクラウドファンディングへの参加の方が、起業家マインドをもつ人には向いているし、結果を出すチャンスとなるのではないだろうか。