クラウドファンディングのリスクと税務知識
クラウドファンディングの最大のメリット
2013年7月31日開催のBPA LIVE Vol.17 テーマ「クラウドファンディング」にて、小池康夫氏(小池康夫税理士事務所所長)が、クラウドファンディングにおける税法的な視点から考えておかねばならないことについて、プレゼンをされました。
クラウドファンディングの最大のメリットは、企業から商品として与えられる大量生産・大量消費システムと別に、自分のほしいもの・したいことがクラウドファンディングで可能になるということで、車が大好きな小池氏は、「ほんとうに出来るならば、ボディはこの車、エンジンは○○社、ステアリングは・・・と、自分だけの車がほしい」、それが可能になるのかもしれないというお話からスタートされました。
つまり、「今、なにができるのか」を、きっちりともっている才能のある者が、本来の力を発揮し活躍できる個の時代に向かっているということです。
さらに、消費者についても、これまで企業の都合でものを買わされていた自分が、ほんとうに自分のしたいこと、ほしいものを明確にし、その自分に責任のもてる時代になる可能性も、クラウドファンディングには秘められているということもお話いただきました。
ビジネスでお金を集めるということは、そこに対しての責任を果たすということとワンセットで、現在、海外、国内合わせ、ほとんどのクラウドファンディングが資金だけを集める目的のものが多く、それでは無理が生じることは目に見えています。
面白い事例として、小池氏は、宝くじで3億円が当たった時、「貯金します」「ローンを返します」という人は、まず、ビジネスとしては、はじかれていき、ビジネスを愛する経営者だったら、なんという言葉を出すかというお話には、なるほど納得でした。
ビジネスを愛し、生み出す多くの経営者と関わっている税理士という仕事をされていらっしゃるならではこその言葉だと感じます。
クラウドファンディングに投資する側、される側のメリット・デメリットのほか、運営側の意識の話は、大変に有益なお話でした。
信託の考え方を用いて、現状、信託法が改正され「なんにでも信託できる」ようになっていることを知らないままに、クラウドファンディングのプラットホームの運営をされている方が多い中、委託者が受託者に対して課せられている「善管注意義務」について、明確な責任をもつ運営するプラットホームが勝ち残るであろうという予測をされました。
この点に関しては、第一部でプレゼンをしたソーシャルメディアマネージャー協会のJasonLange氏の海外事情と、高窪氏、十河氏のスタートした国内のクラウドファンディングにおいても、危機管理として指摘され、第三部で話された日本ビジネスプロデューサー協会理事長の伊藤氏も、「かつてのファンドブームを彷彿させる」と、能力の無いものの気軽な参加によって、意図しない詐欺的行為が勃発するのではないかという懸念を示し、三者の見解が一致するところでした。
クラウドファンディングはスタートしたばかり。
プラットホーム濫立の中、飲み会の資金を他人から集めるような、ふざけたレベルのものも多く見受けられます。
これから、リスクマネジメントを含め、玩具のような扱いではない大人として、民法第644条(受任者の注意義務)に定められた、「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」という法律を胸に刻み、信託法において、受託者に課されている基本的な義務のひとつである「受託者は信託事務を処理するにあたって、善良な管理者の注意をもって行わなければならない」とされている点を守る運営が重要となります。
具体的には、業務を委任された人の職業や専門家としての能力や社会的地位等から考えて、通常期待される注意義務のことでありますが、この通常の注意義務を怠って、履行遅滞や不完全履行、履行不能などに至る場合は「民法上過失がある」と見なされ、状況に応じて、損害賠償や契約解除などが可能となることを忘れてはならないでしょう。